2018年新燃岳噴火に伴う伊佐観測坑道で記録されたひずみ変化について(第4~12報)
- 災害調査報告
京都大学防災研究所附属地震予知研究センター・宮崎観測所が管理する鹿児島県湧水町に設置された伊佐観測坑道の伸縮計(新燃岳から北西に約18km)において、本年3 月1 日より始まった噴火に関連したひずみ変化が観測されています。
(第4報)
3 月5 日14 時前後より、伸縮計のE1 方向(新燃岳に対してradial 方向)が伸び、E2 方向(transverse 方向)が縮みの変化が継続して観測されています。3 月5 日14時から3 月8 日08 時現在のひずみの変化量は、E1 方向が約4.5×10-7,E2 方向が約-3.9×10-7 です(3 月5 日の降雨の影響があるため,値は暫定値)。なお、単純に比較は出来ませんが、2011 年の一連の噴火におけるひずみ変化はE1 方向が約7.5×10-7,E2 方向が約-4.5×10-7 でした。ひずみ変化は3 月8 日11 時現在も継続しているように見えますが、降雨の影響である可能性もあります。(※本資料作成には,気象庁のデータを利用させて頂きました。)
(第5報)
3 月5 日14 時前後より、伸縮計のE1 方向(新燃岳に対してradial 方向)が伸び、E2 方向(transverse 方向)が縮みの変化が継続して観測されていましたが、3 月8 日正午頃を境に変動が小さくなっています。3 月5 日から続いていたひずみ変化は3 月9 日07 時現在、停止しているように見えます。
(第6報は欠番)
(第7報)
3 月5 日14 時前後より、伸縮計のE1 方向(新燃岳に対してradial 方向)が伸び,E2 方向(transverse 方向)が縮みの、深部マグマだまりの収縮を示す非常に大きなひずみ変化が継続して観測されていましたが、3 月8 日正午頃を境に変動が小さくなり、ほぼ収束していると思われます。一方で、3 月1 日~4 日かけて見られた深部マグマだまりの収縮を示す小さなひずみ変化が、3 月13 日23 時45 分頃と3 月14 日05 時頃にも見られています。この変化は、やや振幅が大きな火山性地震・微動が発生し、山頂で噴火が発生している時間と対応しています。引き続き、深部マグマだまりがわずかですが収縮し、新燃岳方向にマグマを供給し続けていることが考えられます。
(第8報)
3 月5 日14 時前後より3 月8 日正午頃まで継続した深部マグマだまりの大きな収縮を示す大きなひずみ変化は現在終息しています。一方で、3 月1 日~4 日かけて見られた深部マグマだまりの収縮を示す小さなひずみ変化(3 月5 日~8 日の数10 分の1~100 分の1 程度)が、3 月20 日01 時30 分頃に見られました。変化が見られたのは月14 日以来で、今回の変化量はE1 方向が1.5×10-9 、E2 方向が-2×10-9程度です。3 月20 日01 時17 分頃に新燃岳が噴火したとみられますが、01 時28 分頃~37分頃に発生した火山性微動に対応してひずみ変化が記録されています(ひずみ変化は01 時50 分頃まで継続しています)。引き続き、深部マグマだまりがわずかですが収縮し、新燃岳方向に少量のマグマを供給し続けていると考えられます。
(第9報)
深部マグマだまりの収縮を示す小さなひずみ変化(3月5日~8日に見られた大きな変化の数10分の1~100分の1程度)が、3月25日08時45分頃に見られました。変化が見られたのは3月20日以来で、今回の変化量はE1方向が2.9×10-9,E2方向が-2×10-9程度です。なお、3月25日08時45分頃に新燃岳が噴火しています(ひずみ変化は09時10分頃まで継続しています)。大きなひずみ変化は観測されていませんが、引き続き深部マグマだまりがわずかですが収縮し、新燃岳方向に少量のマグマを供給し続けていると考えられます。
(第10報)
深部マグマだまりの収縮を示す小さなひずみ変化(3 月5 日~8 日に見られた大きな変化の数10 分の1~100 分の1 程度)が、4 月5 日3 時45 分頃に見られました。変化が見られたのは3 月25 日以来で、今回の変化量はE1 方向が2.8×10-9 、E2 方向が-2.5×10-9程度です。なお,4 月5 日3 時31 分に新燃岳で爆発的噴火が発生し、3 時45 分にも噴火が発生しています(ひずみ変化は4 時過ぎまで継続しました)。
大きなひずみ変化は観測されていませんが、噴火の度に深部マグマだまりがわずかですが収縮し、断続的に新燃岳方向に少量のマグマを供給し続けていると考えられます。
(第11報)
深部マグマだまりの収縮を示すひずみ変化が、5 月2 日午後から3 日午前にかけて見られました。5月3日11時現在、ひずみ変化は収まったように見えます。変化が見られたのは4月5日以来で、一連の活動では3月5日~8日の溶岩噴出を伴った際の変化に次ぐ規模です。5月2日は観測坑道周辺で100mm/day 程度の雨が観測され、この降雨による影響が出ていることが考えられますが、少なくとも今回の変化量はE1方向が1×10-7、E2方向が-2×10-7程度であると考えられます(今後の精査により修正する可能性があります)。
気象庁の発表では、5月2日20時45分頃か23時頃にかけて、霧島山周辺の傾斜計で山体膨張を示す変化が観測されていることから、伊佐観測坑道における今回のひずみ変化は深部マグマだまりから新燃岳方向へマグマが移動したことによる深部マグマだまりの収縮であると推察されます。
(第12報)
5月14日14時44分頃の噴火にともない、深部マグマだまりの収縮を示すひずみ変化が観測されました。変化量はごくわずかで、4月5日の噴火に比べ数分の1程度です。これまでの噴火発生時と同様に、噴火に伴ってマグマが少量ですが新燃岳に供給されているものと考えられます。
※これまでのひずみ変化(3/5~3/8 の変化は10-7,それ以外は10-9 のオーダー)
- 3月1日07時半頃
- 3月1日08時半頃
- 3月1日09時半頃
- 3月3日01時50分頃
- 3月3日16 時50分頃
- 3月4日14時10分頃
- 3月5日正午頃~3月8日正午頃(溶岩噴出を伴う多量のマグマ供給に対応)
- 3月13日23時45分頃
- 3月14日05時頃
- 3月20日01時30分頃
- 3月25日08時45分頃
- 4月5日03時45分頃
- 5月2日~3日(火口北側2kmの火山性地震増加に対応)
- 5月14日14時40分頃
(※本データの資料作成には気象庁の地震観測点データを使用させて頂いています)
詳しくは、以下のリンク先にある資料をご覧ください。