災害調査報告

2024年9月21日に塚田川中流域で家屋流出が発生した地域の洪水氾濫

竹林 洋史
TAKEBAYASHI Hiroshi
気候変動適応研究センター
准教授

2024年9月21日、図1に示す石川県輪島市の塚田川河口から約1.4km上流の左岸に位置する複数の家屋が塚田川の氾濫によって流出するとともに人的被害も発生しました。そこで、家屋流出時の洪水氾濫流の特性を明らかにするため、平面二次元流れによる洪水氾濫数値シミュレーションを実施しました。図1に示すように、洪水時は橋梁に流木が集積することによって塚田川の流れは遮蔽されていました。そこで本解析では、橋梁への流木の集積を考慮したCase1と橋梁を無視したCase2の2つの条件で計算を行いました。上流からの流量は、 XRAINの値を参考に平均降雨強度100 mm/hとして合理式より得られた86 m3/sを与えました。流量の値については今後の検討が必要ですが、本流量で橋梁における流木の集積の影響の検討は可能と考えています。

図2に水深と水深平均流速ベクトルの平面分布を示します。図2(a)と(b)を比較すると、橋梁による流木の集積によって、黄色の実線枠で示された領域に流れが集中し、水深が深くなっていることがわかります。左岸側最上流の建物の上流側の水深は、橋梁を無視した図2(b)では1.12mですが、橋梁を考慮した図2(a)では2.56mと水深が倍以上となっており、橋梁への流木の集積によって家屋を流出させやすい流れとなっていたことがわかります。

ハザードマップや河川整備計画の作成時には、流木の橋梁への集積による洪水氾濫の助長は考慮されていません。しかし、対象地点のような小規模な橋梁であっても流木が集積し、洪水流の流下を阻害して洪水氾濫を助長します。そのため、山地域などの流木の生産源に近い地域の橋梁周辺については、流木や土砂による河道閉塞によって洪水氾濫のリスクが高まるため、注意が必要であることがわかります。また、橋や宅地を建設するときは、利便性だけで無く、流木や土砂などによる河道閉塞時の氾濫流の特性を考慮して両者の位置関係を考えることが重要であることがわかります。

なお、本報告は速報版です。今後の新しい情報などによって内容の一部は修正される可能性があります。

図1 塚田川河口から約1.4km上流の建物流出地区の様子

 

図2 水深と水深平均流速ベクトルの平面分布
(a)Case1(橋梁を考慮)

図2 水深と水深平均流速ベクトルの平面分布
(b)Case2(橋梁を無視)