宮崎観測所
これまでの50年とこれから
YAMASHITA Yusuke
地震災害研究センター海域地震研究領域
助教
観測所の歩み
宮崎観測所は、宮崎県沖の日向灘で発生する地震の予知研究を行うため、 1974年に宮崎市南部の加江田に設立され、今年で50年になります。裏山に総延長300m弱の観測坑道を掘り、地面の伸び縮みや傾斜を測る地殻変動連続観測と地震観測を長年行ってきました。設立当初は防災研究所直轄の施設でしたが、現在は地震災害研究センターの附属施設として運営されており、教職員3名が常駐しています。
注力している研究
宮崎観測所で近年力を入れているのは、巨大地震との関連が指摘されている「スロー地震」と呼ばれる現象の観測研究です。日向灘は南海トラフ沿いで最もスロー地震の活動度が高い領域で、陸上および海域における様々な観測を他機関と連携して強化しています。特に、2014年以降は海底地震観測を継続して実施しており、陸上観測からはよく分からないプレート境界浅部で発生するスロー地震活動の特徴が明らかになってきました。長期間に渡ってプレート境界浅部のスロー地震活動に関する観測データが蓄積されているのは世界でもまれで、日向灘は世界に誇るスロー地震の研究フィールドです。また、江戸時代に発生した日向灘最大級の地震である1662年日向灘地震(宮崎では外所地震とも呼ばれます)の研究が腰を据えてできるのも宮崎観測所ならではです。まだ始まったばかりの研究ですが、この地震はM8級の巨大地震であった可能性が見えてきており、この成果は国の地震本部が行う地震の長期評価に反映され、日向灘の地震活動に対する国の評価が大きく見直されるきっかけとなりました。
社会連携
研究に加え、宮崎県内唯一の地震津波に関する研究拠点として、顕著な地震が発生した際にはマスコミを通じた解説、各種団体からの講演依頼・施設見学対応など、この10年はアウトリーチに特に力を入れてきました。毎年夏休み時期には「京大ウィークス」にも参加し、特別講話と観測坑道見学等を行っています。2021年に当研究所に発足した地震津波連携研究ユニットでは、宮崎観測所は研究から得られた成果を社会に還元するフィールド拠点と位置づけられ、巨大災害研究センターとも連携し小中学校での防災出前授業やフィールドワークの実施、沿岸自治体や地域の地震・津波防災対応のサポートなども行っています。
防災研究所は、2023年に宮崎県と防災に関する連携協力協定を締結しました。宮崎県で発生する様々な災害に対して、防災研究所の有する知見を共有するとともに、防災教育、地域防災において相互に連携しながら活動を行っています。また、2024年には宮崎市にある宮崎公立大学と学術交流協定を締結し、相互の強みを生かした文理融合研究を進め、宮崎の地域防災および防災に資する人材育成に取り組んでいます。スタートは地震予知研究のために設立された宮崎観測所ですが、今後は宮崎県における地域防災研究の拠点となるように、防災研究所内外の研究者とも連携し、次の50年に向け様々な活動に取り組みたいと考えています。