和歌山・白浜海象観測所/潮岬風力実験所
気象・海象のモニタリング拠点
BABA Yasuyuki
気候変動適応研究センター大気海洋モニタリング研究領域
准教授
観測所の歩み
白浜海象観測所は和歌山県田辺湾の湾口部に位置する田辺中島高潮観測塔および観測船「海象」による海象観測をベースとした基礎研究を展開しています。潮岬風力実験所は紀伊半島南端の潮岬の高台にあり、太平洋を望む立地での気象観測をベースとした基礎研究を行っています。
潮岬風力実験所の施設名称は「観測所」ではなく「実験所」となっています。潮岬では測風塔などを使った気象観測に基づく研究に加えて、野外実験場を整備して構造物に作用する強風の影響を自然風を使って実験を行っていたことがその由来とされています。
両施設とも現地における「観測、実測」に軸足を置いた研究施設で、活動を始めた経緯や時期もよく似ており、昭和30年代に現地での実験や観測を開始し、昭和 40年代初頭に各施設が設置され現在に至っています。
注力している研究
白浜海象観測所では、海上の固定観測点である観測塔を用いて気象・海象両面の連続観測を行っています。観測塔は台風接近時など荒れた条件においても安定的に観測を継続することができます。2018年に大きな被害をもたらした台風21号・24号接近時には一部の計測器が被災しつつも、気象・海象に関わる多くのデータを連続的に観測することができました。このような荒れた条件下での観測を行うことは通常容易ではないため、観測例およびデータ数が多くありません。そのような観測例が少ない条件下のデータを含め、気象・海象両方のデータを多項目かつ連続的に観測し、大気と海面に関わる現象を捉えようとしています。
潮岬風力実験所では、紀伊半島南端の高台、および台風を始めとする気象イベントが頻繁に起こるという立地を生かして、沖合で展開される気象、海象観測と連携した気象観測を行っています。沖合で実施される気象、海象の観測に合わせて、潮岬風力実験所でもGPSゾンデの観測を行い、海上と陸上の大気状態の比較から黒潮が大気に及ぼす影響について検討しています。また、潮岬、白浜、そして公用車にマイクロ放射計と雲カメラを設置して、測器直上の大気中に含まれる水蒸気量の高さ方向の分布および雲の水平分布の連続観測も行っています。
社会連携
両施設では測風塔や観測塔を使った観測が連続的に行われています。それらの観測データはそれぞれのWebサイドで公開されています。加えて観測データは学術利用や公的機関等からの依頼に応じても公開、提供されます。それぞれの施設は大学の施設として体験型の実習科目を提供するほか、京大ウィークスなどの際に一般公開も行っています。また、各施設は数少ない気象、海象の現地観測施設でもあり、共同利用施設として学内外の研究者等に開かれ、各方面との共同研究を展開しています。