京都・宇治川オープンラボラトリー
実験研究で水災害のメカニズムと対策に迫る
KAWAIKE Kenji
気候変動適応研究センター 河川防災システム研究領域
教授
本施設の歩み
宇治川オープンラボラトリーは、水と土砂に関する災害の防止・軽減を目的とした実験研究を行うため、1953年に宇治川水理実験所として設立されました。 2002年には、所外の研究機関、一般企業、学校等による共同利用を進め、広く社会に開かれた研究、教育、学習の場であることを示すため宇治川オープンラボラトリーと改称しました。2013年に新しい本館が竣工し、多くの学生、留学生、共同研究者、来訪者が行き交う水防災研究・教育の拠点として、そのハブ機能を強化しています。
注力している研究
災害が起こった時、川の水、海の水、市街地に流れ込んだ水などはどのように流れているのでしょうか。山の斜面や川底の土砂は、水といっしょに流れてどのように侵食・堆積して、新しい地形を作っていくのでしょうか。宇治川オープンラボラトリーでは、大小さまざまな規模の水路・装置で実際に水と土砂を使って災害現象を再現する実験を行い、そのメカニズムを研究することを重視しています。例えば、
- 都市の中を氾濫水が流れるときの広がり方と建物が水から受ける力
- 河川堤防の決壊プロセス
- 山で発生する土石流や流木のメカニズム
- 被害を防ぐための効果的な砂防ダムの形や配置
- 防波堤や消波ブロックによる津波や高潮のエネルギー減少
などに注目して研究しています。これらの実験データは、数値シミュレーション結果と比較することで、数値解析モデルの正確さを検証する研究にも用いられます。宇治川オープンラボラトリーは、このような実験研究を精力的に進めることのできる世界でも数少ない研究施設です。そのため、一部の実験の計測データや映像を研究者・教育者向けにWEBサイトで公開する試みも始めています。
社会連携
豪雨災害や土砂災害への関心の高まりを受けて、学校関係や消防・警察関係の方を対象にして模擬水害体験を伴った施設見学を活発に行っています。一般市民の方を対象とした1年に一度のキャンパス公開(事前予約制)も、毎年予約枠を越える多くのお申込みをいただいています。豪雨災害の危険性を報道するテレビ等のメディアによる取材依頼も受けています。とくに人工降雨装置と流域模型での洪水形成過程の観察、流水階段歩行体験、浸水ドア開扉体験、浸水自動車開扉体験などを通して、豪雨時の河川水位の急な上昇や、水中歩行避難、地下空間やアンダーパスに潜む危険に注意するよう呼びかけています。
また、建設コンサルタント職員を対象とした水理実験や数値解析に関する技術研修や、JICA研修の一環としての海外の実務者向けの施設見学などを行い、所外の専門家のスキルアップにも貢献しています。