特集│地域と科学が育む未来 フィールド研究拠点の活動に迫る

岐阜・上宝観測所

奥飛騨・上高地の地殻活動の理解と地域社会への貢献

大見 士朗
OHMI Shiro
地震災害研究センター地震情報研究領域
教授

観測所の歩み

上宝観測所は、岐阜・長野県境にほど近い、飛騨山脈の山懐に位置する、地震や火山等の観測研究施設です。上宝という地名には馴染みがなくても、奥飛騨温泉郷・上高地・北アルプスなどのキーワードとともに紹介すれば、思い当たる方も多いのではないでしょうか。当観測所は1965年に防災研究所附属上宝地殻変動観測所として設置され、地震予知研究センター上宝観測所を経て、2022年8月に現在の地震災害研究センター上宝観測所となりました。2025年には開所から60周年を迎えます。

注力している研究、社会連携

ここでは、岐阜県飛騨地方から富山県、石川県能登地方に至る中部地方中北部の広域の地震・地殻変動・地球電磁気等の地球物理学的観測を通しての地殻活動の研究や、それらに基づく地震火山防災関連情報の提供等による地域社会への貢献を目指してきました。現在では、主に上高地のランドマークとして知られる活火山・焼岳の火山活動や、その周辺地域の地震活動等の観測研究に従事しています。焼岳の山頂にも観測点を置き、観測データを休みなく気象庁にも分岐して、その火山活動監視に貢献しています。また、奥飛騨・上高地では数年おきに多数の有感地震を伴う群発地震活動が発生することがあります。当地域は急峻な山岳地域であり、気象庁等による公式な震度情報が不充分であることから、自主開発した簡易型の震度計を急峻な山岳地域にも設置して、地域社会の方々が自らの足元で起きていることを即座に把握できる試みも進めています。

 

 

 

 

写真1 冬の上宝観測所の様子。最近は雪が少なくなったが、それでも毎年1月から2月にかけてはかなりの積雪を見ることがある

写真2 2014年の御嶽山噴火災害を受けて整備された焼岳山頂の観測点。焼岳火山防災協議会のメンバーによる視察風景。後方は穂高連峰と上高地

図1 簡易震度計ネットワークの試験観測結果の一例。2 024 年1 月1 日の能登半島地震本 震の観測例。▲は焼岳、▲は穂高岳を、大きな■  は、観測点の位置と計測震度値を示す