特集│地域と科学が育む未来 フィールド研究拠点の活動に迫る

岐阜・穂高砂防観測所

山地・火山流域の土砂流出予測を目指して

 

山野井 一輝
YAMANOI Kazuki
気象・流域災害研究部門流砂・砂防研究分野
准教授

観測所の歩み

当観測所は、1962~1963年の焼岳の水蒸気噴火を受けて土砂流出が活発となった焼岳北麓足洗谷流域(写真1)を対象に、山地流域の土砂流出実態を明らかにすることを目指して1965年に設立されました。以来、土砂流出量の観測技術開発、土石流の現象解明、山地河道特有の河床変動現象、基岩表面での土砂生産等に関する研究が実施されてきました。

注力している研究

写真2は支川のヒル谷下流に設置されている試験堰堤の堆砂池です。ここに堆積した土砂地形を測量することで、流出土砂量を試験堰堤の設立以来、長期観測しています。土砂流出観測をこのように長期間継続している山地流域は世界的にもまれです。いっぽうで堆積土砂は人力で除去する必要があるため定期的に学生さんたちにお願いして、流水による土砂輸送現象を実感してもらいつつ排砂作業をしています。また近年、焼岳の火山活動が活発化の兆候をみせています。もし噴火に至れば土砂流出が再度活発化するだろうと考えられます。火山平穏時から活動期にかけての土砂流出変化を途切れなく観測するため、近年は観測活動の拡充に力を入れています。

社会連携

2007年から砂防学会や近隣の国土交通省直轄砂防事務所と合同で、「若手砂防・土木技術者のための奥飛騨研修会」を実施しています。参加者は多い年には 100人に達し、土砂流出の現場を見学するとともに、研究成果や最新技術に関わる研修を実施しています。その他外部からの研究利用も含めると、コロナ期を除いて毎年のべ500人以上の来訪者があり活発に利用されています。

写真1 足洗谷観測流域のロケーション

 

 

写真2 ヒル谷試験堰堤での土砂出し作業の様子