新センターを設立しました
斜面未災学研究センターの設立
日本は地震、火山、豪雨などの自然災害に数多く見舞われる災害大国です。その中でも特に、斜面災害は近年の災害激甚化や多様化の中で深刻な問題となっています。防災研究は、これまでも「防災」および「減災」の観点から多くの成果を挙げてきましたが、新たな課題である、地球温暖化や巨大地震、少子高齢化といった自然環境および社会環境の変化に対処するためには、さらなる先端的な防災研究が必要です。
このような背景から、防災研究所では、「未災」および「未災学」という新しい概念を提案しています。「未災学」は、国民一人ひとりが「予想される潜在的な災害リスクやその変化を認知し、災害に対する危機感を実感したうえで、わが事ととらえて未経験の自然災害に備えること」を目的としています。この理念に基づき、防災研究所は斜面災害研究センターを改組し、2023年4月1日に「斜面未災学研究センター」を設立しました。
本センターは、斜面災害に関する未災学の体系化を目指し、斜面情報の評価や未災情報の社会への発信を通じて、斜面災害の予測や防止、そして防災リテラシーの向上を推進します。また、将来的には「未災」概念を、斜面災害に限らずあらゆる自然災害に適用する可能性を見据えています。本センターは新たな研究拠点として、より安全で持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
(王 功輝)
気候変動適応研究センターの設立
気候変動適応研究センターを2024年7月1日に設立しました。これは、2007年以来、防災研究所が一体となって学内外の研究者と進めている災害環境の気候変動予測と適応戦略の研究活動を土台にしています。その後、2020年には当研究所に気候変動リスク予測・適応研究連携研究ユニットを設立し、このユニットを引き継ぐ形で満を持して今回のセンター設立に至ったものです。
そもそも、防災研究所は気候変動に関する国家プロジェクト(2007年以来6期続く5年ごとの文科省委託プログラム)において大きな成果を挙げ、国策を先導してきました。しかし、すでに温暖化の影響は顕在化しています。地球全体で1.2度の気温上昇がおき、気候変動がもたらす地球規模のリスクが急激に増しています。2度上昇が予測される 2050年に向けた計画の立案は待ったなしで、極めて重要な
「適応策の創出」と「その定量的評価研究」を飛躍的にかつスピードを持って進める必要があります。そこで、防災研究所の既存のセンター・部門を統廃合して、気候変動に精通した研究者を本センターに戦略的に集結させ、研究の活性化を自ずと促進させることで、幅広な分野への多角化を図ります。そして、その研究成果を国や地方自治体へ適切に橋渡しするノウハウを確立させることが、本センターの使命です。
上記しましたように、防災研究所は自然災害に対する「気候変動適応研究」において他をリードしていますが、これと両輪をなす「気候変動緩和研究」に関しては京都大学の他部局が世界を早くからリードしています。さっそく9月6日には関係者一同が集って本センターのキックオフイベントを開催しました。本センター設立によって、京都大学での緩和・適応研究がいっそう大きな輪になって新しい考え方を創出していくことを期待しています。
(中北 英一)