災害調査報告│2023年トルコ・シリア大地震

2023年トルコ・シリア大地震の建物被害と事業継続性調査

倉田 真宏
KURATA Masahiro
地震防災研究部門 准教授

2023年2月6日にトルコ南東部で発生したM7.8とM7.5の大地震は広域で大規模な被害をもたらしました。発災2ヶ月後に、病院や工業団地を対象に被害と対応について調査しました。地震断層と調査地域を図に示します。病院や工業団地は地盤条件が良好な立地にあり、設計基準を順守した構造では被害は小さい印象を受けました。被災地域にある116の病院のうち94施設が軽微な損傷を受け、その他施設の42棟が大破・中破しました。想定を遥かに超える患者が集中した施設(270床の施設に5千人超など)が混乱し、機能不全を招きました。また外壁や間仕切壁、吊り天井などの被害の影響は大きく、後発地震における損傷の進行やガチャガチャ音により医療関係者が心的外傷後ストレス障害を発症し、発災2週間後に野営テントに避難した例もありました。工業団地でも従業員が被災した影響で 40%程度の減産体制を強いられました。ラマダン月の調査となり、非常食を大量に持ち込みましたが、日没後のラマダンディナーに招かれるなど非常に親切にしていただきました。食料やお菓子を野営病院で教育を受ける子供達にあげると喜んでくれました。犠牲者のご冥福、被災者の生活再建と地域社会の再興をお祈りします。

図 調査チームが訪問した地域と被害調査の様子