災害調査報告│2023年トルコ・シリア大地震

トルコ・シリア大地震時に生じた斜面災害の現地調査

王 功輝
WANG Gonghui
斜面未災学研究センター 教授

2023年トルコ・シリア大地震により、地震断層に沿った広範囲で地すべりや斜面崩壊、落石等の斜面災害が3600箇所以上で発生しました。これらの斜面災害を調査するため、2023年6月12~21日にイスタンブール工科大学Tolga Görüm准教授と協力して現地調査を行いました。現地調査は、地震の損害が比較的に少なかったGaziantep市をベースとして、連日レンタカーで往復6時間以上をかけて現地へ通い調査を進めました。斜面災害の現地へ行く途中では地震で壊滅的な被害を受けたいくつかの町を通過するのですが、町の多くの建物が損害を受け、危険と認定された建物の解体作業が進められている光景をしばしば目にしました。また、政府により新しい住宅団地の建設も急ピッチで進められていました。被災地では、地元の人々が災害の復興に取り組んでおり、治安は非常に良好でした。特に、被災地の人々は私たちの災害調査チームに対して非常に友好的でした。つまり、予想以上に静かで平穏な地域である印象を受けました。斜面災害に対する調査は現地踏査およびドローン撮影に よって実施されました。その結果、発生した斜面災害は以下の5つに大別されることが分かりました。

  • ① 落石:最も多く観察されました
  • ② 緩い層理面に沿った岩盤の並進すべり
  • ③ 大規模な岩盤崩壊およびそれによって形成された天然ダム(写真1)
  • ④ 再活動した大規模地すべり(写真2)
  • ⑤ 大規模地すべり地源頭部の上部斜面で広範に渡って発生したクラックや地盤沈下

さらに、2つの大規模地すべりに対して、地すべり地内外において、複数台の満点地震計を設置し、余震観測を実施しました。10日間の地震観測期間において、Mw1.0~ Mw4.7の余震を1000個以上記録することができました。これらの余震観測データを用いて、地すべり地の震動特性を調べる予定です。

写真1 Islahiye地域の山地斜面において発生した大規模岩盤崩落と天然ダム(2023.06.19撮影)

写真2 Incirlik地域において再活動型した地すべり(2023.06.16撮影)