特集│キソから学ぶ気候変動と防災

候変動と土砂災害

山野井 一輝
YAMANOI Kazuki
流域災害研究センター 助教

気候変動によって雨の降り方が変化することで、雨によって発生する土砂災害にも変化が生じると考えられています。例えば国内の広い範囲で、豪雨の頻度が増加することで、土砂災害の頻度も増加すると予測されています。一方で、土砂災害の性質は気候変動下で変化するのでしょうか。例えば一つの流域で斜面崩壊や土石流が多数発生し、多量の土砂が川を埋めてしまうことで、川の水が溢れて氾濫する恐れもあります。このような「土砂・洪水氾濫」までを考えると、斜面崩壊・土石流の発生個数が変化することで、災害の発生形態も変化しうると考えられます。図は、我々が開発しているシミュレーションSiMHiSを使って、2017年九州北部豪雨で被災した乙石川という川の流域に、現在・将来気候下で発生しうる「豪雨」を多数与え、最大の水の流量と、発生する土砂の量の関係を予測した結果を示しています。図から、現在までの気候では発生しない規模の現象や、流量は小さいが土砂生産量は大きいなど、これまで発生しにくかった形態の現象も、将来の気候では発生しうることが確認できます。モデルによる予測なので、本当にすべての現象が発生するかは検証できませんが、過去に経験したことのない形態の土砂災害が発生しうる、ということは言えるでしょう。

図 SiMHiSを使った気候変動影響評価の事例(山野井ら、水工学論文集、2021)。

オススメ本

「砂防の観測の現場を訪ねて1 土砂災害を知るための観測」公益社団法人砂防学会、2020年