特集│キソから学ぶ気候変動と防災

並々ならぬ波

志村 智也
SHIMURA Tomoya
気象・水象災害研究部門 准教授

海岸に打ち寄せる波が、どこからやってきたか考えたことがあるでしょうか。海のどこかで風が吹くとそこで波が発生し、その風が強ければ強い程、波の高さは大きくなります。その波が、ときに何千 km以上も海を伝わり海岸に到達しその生涯を終えます。つまり、海の上を吹く風の性質が変化すると、それに伴って海の波の性質が変化するということになります。気候変動が進むと大気のバランスが変化し、風とそれに伴う海の波が変化することになります。私たちは気候変動によって将来どのように波が変化するかを予測し、平均的な波の高さが増加もしくは減少する海域をつきとめています(図)。平均的な波の変化に加えて、防災上重要なのは、台風や低気圧の強風で発生する極端な波の変化です。そうした極端な波から私たちが生活する場所を護るために堤防などの構造物が海岸に設置されています。海岸構造物は、起こり得る極端な波の高さの確率を想定して設計されています。気候変動によりその確率が変化するならば今後の海岸構造物の設計を変更しなければなりません。実際に、気候変動により強い台風の割合は増加することが予測されているため、極端な波の発生確率は変化します。その変化を正確に予測することが、私たちの研究テーマになっています。

図 平均的な波高の将来変化予測結果。赤と青色はそれぞれ増加と減少を表す[%]。

オススメ本

「さよなら私」みうらじゅん、2009年

気候変動の問題を考えるとき、自分(私)優先ではなく、地球を主役として考える必要があると思います。そんな気構えの参考になる本です。