特集│キソから学ぶ気候変動と防災

気候変動と災害 ─水文学の重要性

山本エヴァ
YAMAMOTO Eva
社会防災研究部門 特定助教

みなさんは、気候変動について聞いたことがあると思います。そして、猛暑の夏や短い花見の季節を気候変動の影響だと思っているかもしれません。気候変動とは、地球の気温や気象パターンが長期間でゆっくりと変わることです。しかし、気候変動は単に気温が上昇するだけではありません。すべてがつながっているので、災害にも影響を及ぼします。温暖化によって氷床が融け、海水が膨張して海面が上がることもあれば、温暖な大気がより多くの水蒸気を含み、激しい豪雨や洪水を引き起こすこともあります。そして忘れてはいけないことは、高温と長期の乾燥期によって、火災がより危険になることもあるのです。

さて、私の研究についてお話ししましょう。私は水文学分野の研究をしています。水文学は地球上の水循環を対象とする研究分野です。水文学の研究の中でも、私はどれだけの水が土壌に蓄えられ河川へ流下するのかといった水の流れについて研究しています。気候変動の影響を評価するために、私は将来の厳しい洪水や火災を予測し、リスクの高い地域を特定し、発生の可能性を評価することに取り組んでいます。みなさんは、この研究の重要性を疑問に思われるかもしれませんね。2020年代に生まれた子供たちを想像してください。彼らが2100年に80歳になる頃、私たちが将来の災害に備えていなければ、彼らは深刻な課題に直面するかもしれません。だからこそ、私は水文過程を表現できる物理的なモデルと降雨や気温といったデータに基づいた火災リスクの指標を用いて、2100年ごろの洪水と火災のシミュレーションを行っています。これにより、水災害リスクの高い地域に住む人々を守るためにより良い洪水対策や土地利用計画のお手伝いができます。

研究がより良い、安全な未来に向けて道を切り拓くのは魅力的ではありませんか? 気候変動とその潜在的な影響を理解することで、賢明な決定を下し、私たち自身と地球を守る力を手に入れることができるのです。

2000年から2020年の間で発生したインドネシアの洪水と火災

オススメ本

「気候変動への「適応」を考える:不確実な未来への備え」肱岡靖明、2021年

「図解でわかる 14歳から知る気候変動」インフォビジュアル研究所、2020年