特集│キソから学ぶ気候変動と防災
来るべき極端気象による災害に備える
竹見 哲也
TAKEMI Tetsuya
気象・水象災害研究部門 教授
TAKEMI Tetsuya
気象・水象災害研究部門 教授
最近は毎年のように、台風・豪雨・猛暑といった極端な気象による災害が発生しています。これら極端気象は、地球温暖化によってその影響がさらに深刻になると懸念されています。気候変動問題を国際社会で議論する国連気候変動枠組条約締約国会議では、2015年会議でパリ協定が採択され、将来の地球温暖化を2度に抑えること、さらに1.5度に抑える努力を追求すること、が決められました。2度上昇すると、気温はそれだけ嵩上げされますから、猛暑のリスクは大きくなるでしょう。台風や豪雨はどうでしょうか? 台風や豪雨は、積乱雲が集団化して発生する現象です。その発達の仕組みを理解することは難しい課題です。積乱雲の集団化には、大きなスケールの気圧配置に加え、大気の不安定さや水蒸気量の分布といった局地的な状況が複雑に絡み合っているからです。台風や豪雨などの極端気象は温暖化によってどう変わるのかという仕組みを理解することがまず大事です。その上で、いま起こっている極端気象について温暖化の影響はどの程度なのか、風水害への影響は将来の温暖化によってどう変わるのか、それは既存の防災対策で対応できるものなのかどうか、ということを量的に示すことが必要です。温暖化による極端気象の激甚化を客観的に想定して、風水害への備えを着実に進めることが大切です。