特集│AIと防災データサイエンス

防災分野におけるAIの活用

屋根損傷率算出と合成被災画像によるデータ拡張

藤田 翔乃
FUJITA Shono
巨大災害研究センター 災害情報システム研究領域/情報学研究科社会情報学専攻 D3
浅見 幸悠紀
ASAMI Koki
巨大災害研究センター 災害情報システム研究領域/情報学研究科社会情報学専攻 D1

私たちは、災害時の住家の被害認定調査における屋根調査を自動で行う画像認識モデルの開発をしています(図1)。航空写真から深層学習を用いて屋根損傷率を自動算出することで、従来方法より正確かつ効率的な調査を行い、被災者の生活再建を迅速化させることを目的としています。現状では、正解の損傷率と推測の損傷率の決定係数は0.3445、相関係数は0.6486であり、更なる精度向上が必要であると考えています。深層学習における精度向上には、豊富な学習データを用いることが重要となります。しかし、発生頻度が低いことや、緊急時にはデータを取得するリソースが逼迫していることなどから、災害に関する学習データを大量に収集することは容易ではありません。

そこで、私たちは合成データを用いたデータ拡張(データのかさ増し)の研究にも取り組んでいます。この研究では、深層学習ベースの生成モデルを使用し、少量の被害あり屋根画像からクオリティの高い合成画像の生成に成功しました。実データが少なく、画像の回転など従来のデータ拡張による拡張比率が高い被害クラスに対して、平均11.4%の再現スコアを向上させ、全体の再現スコアも3.9%向上することが確認されました。また、合成画像自体のクオリティを評価すべく、被害認定調査に携わる全国自治体職員を対象としたアンケートを実施しました。その結果、実務に関わる職員でも区別できないほど高いクオリティであることが確認されました(図2)。

図1 屋根損傷率の算出

 

図2 合成被害屋根画像と定性評価結果