特集│AIと防災データサイエンス

人工知能は土の動きを予測できる?

深層学習を利用した時系列データ予測

後藤 浩之
GOTO Hiroyuki
地震防災研究部門耐震基礎研究分野
教授

将来の地震災害を軽減し豊かな都市を創造するため,地震工学という分野の研究を進めています。地震工学分野では、地震の揺れを記録したデータや、地震の揺れを受けて壊れる様子を実験したデータのように、時間軸に沿って変化するようなデータ(時系列データ)を多く扱います。大量のデータから重要な情報を取り出して、適切にモデルをつくり、様々な用途に展開していくことが求められるのですが、果たして全ての情報をデータから十分に取り出すことができているのでしょうか?

私たちの研究チームでは深層学習を取り入れた方法によって、地震工学における時系列データの予測問題を研究しています。土は、その動きを予測することが難しい材料のひとつです。小さな振動では弾性体のように振る舞いますが、水で飽和した砂の地盤を大きく振動させると液状化現象が生じ、柔らかく大きく変形してしまいます。そこで、機械学習の一種である深層学習を利用して、様々な土の試験データを学習させた、土の振る舞いを予測するモデルを考案しました。一般に機械学習のみでつくられるモデルは、学習時に含まれないデータに対して予想外の動きを示してしまうことがあります。考案したモデルは、これまでに数多く提案されているモデル(数理モデル)と深層学習をうまく組み合わせることによって、精度良く、かつ安定して予測できるよう工夫しています。現在は限られた変形条件(一面せん断変形)で実装したところですが、より一般的な条件にも適用できるように研究を進めています。

土の振る舞いを予測するモデルの概念図