平成28年熊本地震の概要(速報) (Newsletter80号より)
- 災害調査報告
平成28年熊本地震の概要(速報)
2016年4月14日21時26分頃、熊本県でマグニチュード(M)6.5の地震が発生しました。この地震では、熊本県益城町(ましきまち)では震度7を記録しましたが、28時間後の4月16日1時25分頃には、さらに規模の大きなM7.3の大地震が発生し、益城町と西原村(にしはらむら)で震度7を記録したほか、九州地方を中心に関東地方や東北地方の一部を含む西日本の広い範囲で有感となりました。このM7.3の地震の後、活発な地震活動の範囲は熊本県の阿蘇地方や大分県の別府地方まで広がり、現在でも活発な活動が続いています(図1)。これらの一連の地震は、平成28年(2016年)熊本地震と命名され、5月4日現在で死者66名(震災関連死を含む)、重軽傷者1,583名、住宅の全半壊が5,699棟という大きな被害が生じています。
平成28年熊本地震は、九州地方中部を代表する活断層帯である布田川断層帯・日奈久断層帯の活動によるものでした。これらの活断層帯は、政府の地震調査研究推進本部(以下、地震本部)によって全国で評価されていた主要97断層帯の1つであり、今後30年以内に地震が発生する確率が「高い」または「やや高い」と評価されていた断層帯でした。4月14日の地震が日奈久断層帯の北部、4月16日の地震が布田川断層帯で発生したものと地震本部により評価されています。加えて合成開口レーダー解析の結果や現地における地表地震断層の調査結果などを合わせると、4月16日の地震でも布田川断層帯だけでなく日奈久断層帯の北部も活動したと考えられます。また、今回の一連の震源域となった大分から阿蘇を通って熊本にかけての領域は、最近20年間のGNSS(全地球衛星航法システム)観測データから、内陸域で周辺よりもひずみ速度の大きい「ひずみ集中帯」として認識されていた領域で発生しました。よって、熊本地震は研究者間や国の評価では従来からリスクが高いと認識されていた断層帯で発生した地震ですが、必ずしも自治体や地域住民にまでそのような意識が浸透していたとは言えません。防災研究所では、熊本地震に関する地震動や衛星データなどの解析や現地における臨時地震・GNSS観測、建築物や構造物、斜面災害等の被害調査・研究が行われており、本DPRI Newsletterでも次号以降に紹介していきます。
地震予知研究センター 西村 卓也