大気・気象に関するご質問
Q&A

質問
天気予報はなぜ、ときどきはずれるのですか?

回答
日々の天気予報は数値予報という手法を用いて発表されています。
数値予報は、世界各地で観測した気温、気圧、水蒸気、風速などの気象データを使用して現在の状態を大気モデルに入力し、スーパーコンピュータで大気モデルを時間積分して、未来の大気の状態を予測する手法です。
大気モデルは大気の時間変化を表現するコンピュータプログラムで、ニュートンの力学の第2法則、熱力学の第1法則、質量保存の法則などの物理基本方程式をもとにしています。このような大気モデルを使うことで、いくらでも遠い未来の天気を予測することはできます。しかし、この予報は1~2週間後には無意味なものになります。というのも、大気運動のカオス的な性質のために、観測の小さな誤差が時間とともに指数関数的に増加するからです。
結果として、予測された大気の状態が現実と全く異なったものになります。この性質は、初期値に対する敏感度やバタフライ効果としてよく知られています。
さらに大気モデルの水平解像度(約50km)が粗いので、集中豪雨、竜巻、ダウンバーストなどのスケールの小さい気象現象(1~10km)を現在の大気モデルは再現することができません。
しかし、地球シミュレータプロジェクト(http://www.es.jamstec.go.jp/)のような先端的なプロジェクトで、雲や小さな気象現象を解像する次世代大気モデルを構築する計画が進んでいます。(災害気候分野)

関連項目

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質問
エルニーニョは世界中の異常気象を引き起こすのですか?

回答
数ヵ月以上続く、熱帯東部太平洋の広範囲な水温の上昇を、エルニーニョを呼びます。エルニーニョは数年ごとに起こります。エルニーニョの間は、地表風によって熱帯太平洋の海洋循環が変化し、大気循環もまた海面水温によって変化します。従って、大気と海洋は相互作用する1つのシステムであると認識して、エルニーニョを理解する必要があります。
エルニーニョは熱帯の熱的に直接な大気循環の変動を誘起し、熱帯の異常気象を引き起こします。エクアドルやペルーで洪水が頻発し、東南アジアやオーストラリア北部で旱魃が発生し、南アジアのモンスーンが弱くなる傾向が指摘されています。またエルニーニョは中高緯度の大気循環に対して間接的なやり方で影響を与えます。エルニーニョが活発な時期に、大気の加熱偏差が最大である中央太平洋の上部対流圏で、対となった高気圧が発達します。この高気圧から、極向きに出ていくプラネタリー波列が励起され、それが屈折して大円経路に沿って赤道向きに戻ってきます。この波列は太平洋-北米(Pacific North American; PNA)パターンとしてよく知られており、特に、カナダ西部に気圧の尾根、その東に気圧の谷をもたらすことによって中緯度循環を変えます。偏西風ジェット流が、アメリカ西部とカナダで北向きに、アメリカ東部で南向きにずれます。偏西風ジェット流は熱帯の空気と極の空気の境界にあらわれるので、この変化はアメリカ西部とカナダに通常より暖かい温度を、アメリカ東部に通常より冷たい温度をもたらします。またストームトラックと呼ばれるの高低気圧の活発な領域の位置が変わることによって、高低気圧の発達や移動経路がエルニーニョの間に変化します。(災害気候分野)

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質問
最近、大雪が減ったように思うのですが、地球温暖化の影響でしょうか?

回答
全球平均地表温度が20世紀で0.6度程度上昇していることが報告され(IPCC,2001)、人間活動による影響が注目を集めています。
なぜなら、大気中の二酸化炭素(C02)濃度が、産業革命以前の280ppmv程度から2000年には370ppmv程度まで、化石燃料の燃焼のために増加しているからです。
基本的に、地球温暖化は次のような大気の”温室効果”の強化によって引き起こされます。地表面からの赤外放射は、水蒸気、二酸化炭素、メタンのような温室効果ガスに吸収され、逆に地表面に向かって赤外放射します。
一方、(成層圏オゾンによる紫外線の吸収を除く)ほとんど全ての太陽放射は大気中で吸収されず、地表面に到達します。
従って、地表面は、大気がない場合と比べて、その上の層からの付加的な赤外放射を受け取ることになります。
このようにして、温室効果ガスの増加は、将来の全球気候変動に対して最も重要な影響を与えます。
例えば,数種類の気候モデルによると,1990年から2100年までに全球平均温度は2.0度から4.5度の範囲で上昇することが予測されています(IPCC, 2001)。
上記を考慮し、最近の暖冬傾向は、部分的には人間活動による地球温暖化によって引き起こされているといえます。しかし気候システムに内在する自然変動ががこの傾向をわかりにくくしています。実際、今年の冬季(2002/2003)の日本の温度は、平均値より低いです。(災害気候分野)

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質問
ハリケーンと台風とでは、成り立ちが違う、生誕場所が異なるようですが、被害となると、どちらの規模が大きいのでしょうか?

回答
東経180°以東の太平洋と大西洋にある熱帯低気圧のうち,最大風速が33m/s以上のものをハリケーンと呼び,北半球の東経180°以西の太平洋や南シナ海に現れる熱帯低気圧のうち,最大風速が17m/s以上になった熱帯低気圧のことを台風と呼びます。どちらも発達した低気圧という意味では同じもので,強さや大きさによる区別ではないため、呼び名によって被害の程度や規模に違いがあるわけではありません。これまでに大きな被害をもたらしたハリケーンと台風を被害に対して支払われた保険金の最高額で比べてみると、1991年に日本を襲った台風19号で約6千億円,1992年に合衆国を襲ったハリケーン・アンドリューの被害ではその約3倍の保険金が支払われました.ちなみに兵庫県南部地震で支払われた保険金支払額は約8百億円でしたので,台風による被害損失がいかに大きいかがわかります。また、全世界の自然災害による保険金の支払総額をみると、強風に起因するものが約78%と第一位になっており、二位の地震12%に大きな差を付けています。(耐風構造分野)

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質問
沖縄ではあまり台風の被害を受けたという報告を聞いたことがありませんが、沖縄に上陸した時点では規模が小さいからですか?山が少ないことと関係がありますか?

回答
台風は主に海からの水蒸気をエネルギー源として発達するため、一般に本州付近よりも沖縄付近にあるときのほうが勢力が強いことが多いです。また、陸上に比べて植物や建物などの凸凹が少ない海のほうが風速も強くなるので、海に囲まれた沖縄に吹く風は本州の内陸部に吹く風よりも強いといえます.沖縄では過去に大きな被害を受けたこともあり,現在でも決して被害が少ないとはいえません.ただ,強い雨、風に良く襲われるため、家の周りに石垣を巡らして風よけにしたり、雨や風に強いコンクリート造りの家を建てて台風による被害に備えています。そのため、台風に襲われる頻度も少なく、雨や風に対する防備がなされていない地域に比べ,被害を受た場合でも大きな問題になることが少ないと思われます。一方,山の影響ですが、六甲おろし等、地形によって局地的に風が強まる場合もあるので、沖縄に高い山がないことと台風の被害が少ないことには、直接の関係はないといってよいでしょう。このように、日頃から台風を意識し、備えを怠らないことが被害を防ぐうえで一番大切です。(耐風構造分野)

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質問
台風などが接近する際に、注意しなければない強風と、それに伴う被害について教えてください。

回答
 台風が接近すると、気象庁ではその周りに「暴風域」や「強風域」を発表し、強風被害に対する注意を呼びかけます。暴風域とは「台風の周辺で、平均風速が25m/s以上の風が吹いているか、地形の影響などがない場合に、吹く可能性のある領域」、強風域とは「台風や発達した低気圧の周辺で、平均風速が15m/s以上の風が吹いているか、地形の影響などがない場合に、吹く可能性のある領域」です。ここで、平均風速とは10分間の平均値をいい、単位は「毎秒…m」または「…m/s」を用います。もともと高度10mにおける観測値を表していましたが、現在では10mよりも高い建物がたくさん建っているため、観測値や計算で求めた値をもとに、建物などの影響を受けない場合の高度10mの値を求めて用いています。
 さて、自然の風では図に示すように、風向や風速が時々刻々変化しますので、強風による被害を考える場合は瞬間風速の最大値である「最大瞬間風速」の値が重要となります。 最大瞬間風速は、平均風速の1.5~2倍程度といわれており、たとえば、平均風速20m/sの場合には瞬間的に最大30~40m/sの風が吹くことになります。ただし、この値は風が比較的弱い場合のもので、台風のときのように平均風速が40m/sを超えるような非常に 強い風の場合には、1.2~1.4倍程度になるといわれています。なお、これまで台風時に観測された風速の最大瞬間値は約90m/sで、それ以上の記録は計測機器が壊れるなどして、残っていません。
 次に、強風が吹くと、どのような被害が起こるか見てみましょう。平均風速が15~20m/sの場合、最大瞬間風速は30~40m/sとなり、歩行者は何かにつかまっていないと立っていられなくなり、屋外での行動は危険になります。細い木の幹が折れたり、根の張って いない木が倒れ始めます。電線などは大きく揺れ始め、屋外設置物、看板などが落下・飛散し始め、道路標識は傾きます。走行中の車は通常の速度で運転するのが困難になって、危険な状態になります。背の高いトラックなどは横転することもあります。平均風速が30~40 m / sになると、最大瞬間風速は6 0~80m/sに達します。この場合は、多くの樹木が倒れ、電話ボックスや自動販売機が倒れたり、移動したりします。電柱や街灯も倒れ、ブロック壁が倒壊します。建物は、木造住宅が倒壊し、鉄骨構造物が変形するような被害も出てきます。ちなみに、電柱は瞬間風速が60m/sを超えると被害が出始め、瞬間風速が80m/sを超えるとほぼ全ての電柱が被害を受けます。
 最後に、強風時の人的被害の多くは割れたガラス片によるケガです。したがって、ガラスが割れないようにする、割れたガラスでけがをしないように注意することが大切です。また、強風により吹き飛ばされたり、飛散物に当たったりする被害も多いので、強風が吹いているときには外出せずに家の中にいることが大切です。(耐風構造研究分野)

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