平成29 年度水資源セミナー「スリランカの伝統的水資源施設の持続的管理の鍵を探る」を開催

  • イベント報告

 2017 年10 月31 日に、平成29 年度水資源セミナー「スリランカの伝統的水資源施設の持続的管理の鍵を探る」(Key issues for sustainable management of traditional water resources systems in Sri Lanka)が京都大学宇治キャンパスで開催されました。参加者は研究者と実務担当者を中心に合計84 名以上(うち外国人は17 名)でした。31 日にはおうばくプラザで講演会とパネルディスカッションを行い、午前中には、小山田宏一 奈良大学文学部教授、スリランカ灌漑局のThavakkumar VALLIPURAM 氏ならびにKirushnarupan NAVARATHINAM 氏による3 件の基調講演が行われ、午後には大川裕子 日本女子大学研究員、高橋靖次 大阪府都市整備部河川室課長補佐、小田哲也 兵庫県洲本土地改良事務所主任による3件の事例講演が行われました。これらの講演によって、スリランカ、中国、韓国、日本のため池の歴史、形状、機能と管理に関する知見を知る機会となりました。その後、角哲也教授の司会によるパネルディスカッションでは、講演者全員に田中茂信教授と独立行政法人水資源機構の荒井稔氏をパネラーに招き、古代から現代に引き継がれてきた4カ国の伝統的なため池灌漑施設のネットワークの特性、さらには、これらが持続的に管理されてきた鍵、今後に向けた課題と解決策の観点から意見が交換されました。
 まとめとして、以下の3点の重要性が確認されました。

1)狭山池やスリランカに見られる親子構造の貯水池ネットワークとツインシステム
(危機管理や大規模維持管理時のバックアップシステム)の導入
2)土砂を貯めないための河道外貯水システムや土砂流入防止のために流域管理の採用
3)気候変動に伴う異常洪水や異常渇水に対する適応策としての貯水量の強化

 

 

開催趣旨
スリランカでは、2000 年以上の歴史を有する伝統的な灌漑水利施設群(ため池)が存在し、個々の施設はもとより、連珠式と呼ばれる親子構造のため池ネットワークによる水資源管理システムに先進性があり、日本の代表的な古代水利施設であり大阪の狭山池にも影響を与えたとされる。インフラの長寿命化が求められる中、これら伝統的な水利施設が今日まで受け継がれてきた歴史と、今日に通じる設計・管理上の鍵を明らかにする。
 

発表プログラム
・基調講演(10:10-12:10)
小山田宏一(奈良大学文学部文化財学科教授)
「日韓のため池灌漑のはじまりとその発展」
Thavakkumar VALLIPURAM (Irrigation Engineer, Irrigation Department of Sri Lanka)
「スリランカの水資源」
Kirushnarupan NAVARATHINAM (Irrigation Engineer, Irrigation Department of Sri
Lanka)
「スリランカMALWATHU OYA 河川流域を対象とした水資源管理と現在及び将来の課題」
 

・事例講演(13:30-15:30)
大川裕子(日本女子大学学術研究員)
「中国古代のため池灌漑―南陽・淮域における連珠式灌漑を中心に―」
高橋靖次(大阪府都市整備部河川室課長補佐)
「狭山池、平成の大改修と今後の利活用の展望」
小田哲也(兵庫県淡路県民局洲本土地改良事務所主任)
「東播磨のため池管理」
・パネルディスカッション(15:50-17:30)
司会:角哲也(京都大学防災研究所)
パネラー:小山田宏一・田中茂信・Thavakkumar VALLIPURAM・Kirushnarupan
NAVARATHINAM・大川裕子・高橋靖次・小田哲也・荒井稔
 

(a)スリランカ河川図,(b) スリランカ気候区分,(c)Malwathu oya 河川流域,(d)最下流部ため
池ネットワーク(Giant Tank とFeeder Tank,ツインシステム),(e)ため池ネットワーク模式図
(上流のため池群,下流の河道外貯水池群(本川の土砂通過),将来に向けた貯水量増加計画)