【プレスリリース】20世紀前半の北極圏温暖化、遠く離れた海洋の温度上昇が影響 ――現在の気候変化とは異なる北極圏温暖化メカニズムを発見――

  • 研究報告

時長宏樹白眉センター特定准教授、向川均防災研究所教授、 Shang-Ping Xieカリフォルニア大学スクリプス海洋研究所教授の日米共同研究グループは、最新の観測データベースと地球規模の大気や海洋の動きのシミュレーションを用いて、20世紀前半の北極圏温暖化を再現することに成功しました。20世紀前半の北極圏温暖化は現在の気候変化に伴う北極圏温暖化とは異なり、温室効果ガスの影響が小さく、海氷の融ける量も少なかったという特徴があります。そのため、気候に内在する何らかの自然変動が原因であると考えられてきましたが、メカニズムは不明でした。今回の研究を通して、熱帯太平洋や北大西洋といった北極から比較的離れた海域の海面温度上昇が大気の動きに影響を与え、地表付近の熱を北極圏へ運ぶことで温暖化が加速することが分かりました。本研究成果は、将来的な北極圏の気候予測精度の向上や北極圏の温暖化に対する気候緩和策、気候適応策の決定などにおいて、重要な示唆を与えるものです。

 

論文は2017年5月31日 (日本時間)、米国科学アカデミー紀要(PNAS)にオンライン掲載されました。

詳細はこちらからご覧ください(京大本部HP)。

 

 

図 数十年規模の太平洋と大西洋の海水温上昇によって引き起こされる北極の温暖化。

特に熱帯太平洋や北大西洋の水温上昇が大気の流れを変え、北極圏に熱を運ぶ。