プレスリリース:日本海溝沈み込み帯で発生したゆっくり地震を再現 —ゆっくり地震域は巨大地震発生域?—

  • 研究報告

日本海溝沈み込み帯で発生したゆっくり地震を再現
—ゆっくり地震域は巨大地震発生域?—

  本研究所の伊藤喜宏准教授(海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センター沈み込み帯掘削研究グループ招聘主任研究員)は、氏家恒太郎 筑波大学生命環境系地球進化科学専攻准教授(海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センター沈み込み帯掘削研究グループ招聘主任研究員)らと共に、東北地方太平洋沖地震前に観測されたゆっくり地震を地球深部探査船「ちきゅう」で採取した試料を用いた室内実験により再現することに成功しました。通常の地震では、岩盤が数秒から数十秒間で急速に滑りま すが、ゆっくり地震では、数日から1年以上かけてゆっくり滑ります。東北地方太平洋沖地震発生前にもゆっくり地震が観測されており、近年、巨大地震発生と の関連が特に注目されています。

 実験に用いた試料は、統合国際深海掘削計画(IODP)の一環として2012年4月1日~5月24日に実施された、地球深部探査船「ちきゅう」による第343次研究航海「東北地方太平洋沖地震調査掘削」(2012年3月9日2012年5月25日既報)により、震源域のプレート境界断層浅部から採取されたものです。これまで同試料を用いた別の室内実験により、東北地方太平洋沖地震時の高速滑りが再現され、地震時の断層滑りメカニズムが明らかになっています(2013年12月6日既報)。

 従来、プレート間の固着が強い領域を巨大地震発生域と考える巨大地震モデルが提唱されてきました。本研究成果により、プレート境界断層浅部では、ゆっくり 地震のゆっくりとした滑りと巨大地震時の高速滑りが同じ断層で起こり得ることが実証されたことから、ゆっくり地震の発生域であるプレート境界断層の浅部も 巨大地震の震源域に含める新たな巨大地震モデルを検討する必要性を迫る極めて重要な研究成果といえます。

本成果は、英国科学誌「Nature Geoscience」電子版に10月5日付け(日本時間)で掲載されました。

タイトル:Spectrum of slip behavior in Tohoku fault zone samples at plate tectonic slip rates
著者名:Matt J. Ikari1, Yoshihiro Ito2,3, Kohtaro Ujiie2,4, Achim J. Kopf1
所属:1. ブレーメン大学(ドイツ)、2. 国立研究開発法人海洋研究開発機構、3.国立大学法人京都大学防災研究所、4. 国立大学法人筑波大学

詳細は、こちら(国立研究開発法人海洋研究開発機構 プレスリリース全文)をご参照ください。

クリップボード01

断層試料を採取した場所(掘削地点C0019:東北地方太平洋沖地震の震央、巨大地震発生域、ゆっくり地震発生域の分布の掘削地点(C0019)の海底面下約820mから採取されたプレート境界断層試料を実験に用いました。

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A)鱗片状構造が発達したプレート境界断層。今回、赤四角で囲った部分から採取した試料を用いて摩擦実験を行いました。実験に用いた2種類の試料。(B)鱗片状構造と平行に整形した試料。(C)粉末状試料。

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実験に用いた摩擦試験機の概要

 

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プレート境界断層物質を用いた摩擦実験結果。(A)鱗片状構造と平行に整形した試料を用いた実験。(B)粉末状試料を用いた実験。(A)の場合において、ゆっくり地震(SSEと記された矢印)と同等の現象が発生しています。

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鱗片状構造と平行に整形した試料を用いた実験で認められたゆっくり地震の挙動。この実験では、数時間かけて応力が約120キロパスカル(0.12 MPaに相当)降下すると同時に、滑り速度が毎秒2.7ナノメートルから6.3ナノメートルまで増加しました。