第8回礫床河川に関する国際会議開催報告

  • イベント報告

第8回礫床河川に関する国際会議

“The 8th International Gravel Bed Rivers Workshop (GBR8)”

開催報告

 

1.はじめに

2015年9月14日から18日かけて宇治キャンパス黄檗プラザと高山市のホテルアソシア高山リゾートにて,第8回Gravel Bed Rivers Workshop (以降GBR8)が開催された。この国際会議は1980年に始まり,礫床河川に関わる世界の研究者が5年に一度,一堂に会して議論するもので,これまでは欧米諸国を中心に開催されてきたが,今回がアジアで初の開催となった。この会議では,世界各地の山地河川で広く一般的にみられる河川形態である礫床河川に関する様々な事象,例えば土砂移動現象,河川の自然生態系,土砂・水に起因する自然災害,ダム貯水池の堆砂問題や排砂技術等々に関して,それら各分野の第一線の研究者が,最新の学術研究について議論する場である。実行委員会(LOC)は,藤田正治(流域災害研究センター 教授),Jonathan Laronne(Ben Gurion University of the Negev, Israel 教授;防災研招へい外国人学者),宮田秀介(流域災害研究センター 助教),水山高久(政策研究大学院大学 教授),里深好文(立命館大学 教授),竹林洋史(流域災害研究センター 准教授),堤大三(流域災害研究センター 准教授)というメンバーで構成され,国際会議の準備・運営を行った。

今回の会議には総勢125名が参加した。参加者の国籍は,Austria,Canada,Chile,China,France,Germany,Indonesia,Israel,Italy,Japan,Nederland,New Zealand,Norway,Spain,Switzerland,Taiwan,UK,USA の18カ国にわたり,日本からは33名が参加した。また,参加者のうち17名は博士課程在籍の学生であった。

 

2.講演概要

会議の構成は,全14セッションに2から3名ずつの招待講演者からなり,一つの会場で5日間にわたって29名の招待講演者による口頭発表が行われた。招待講演者の中には,防災研究所からも藤田正治教授,角哲也教授,竹林洋史准教授,竹門康弘准教授も含まれる。またポスターセッションでは62のポスター発表が行われた。過去7回の礫床河川に関する国際会議でも,その時々の最新研究についての議論がなされてきたが,今回の会議においても,世界的に懸案となっている事象に関する研究について議論された。特に,今回の会議におけるサブテーマとして「礫床河川と災害(Gravel Bed Rivers and Disasters)」を掲げて,近年激甚化している洪水災害・土砂災害と礫床河川の関係について議論する事を重点テーマとしており,実際に甚大な災害を経験している,台湾,インドネシア,イタリア,日本からの研究者が,自然環境としての礫床河川と人間活動との関わりに関しての研究成果を発表し,議論がなされた。口頭発表については,インターネットにて配信予定であり,詳細は,ホームページ(http://www.gbr8.dpri.kyoto-u.ac.jp/)を参照頂きたい。

 

3.礫床河川現場

初日の14日は,きはだホールにて寶馨防災研所長による歓迎のスピーチの後,4セッションの講演が行われた。15日以降は全員で高山市へと会場を移して会議が行われた。この国際会議GBRが伝統的に礫床河川現場に近い場所で行われてきたことが,高山市を会場に選んだ理由のひとつである。更に,防災研究所の穂高砂防観測所が高山市に所在している事も,もう一つの理由である。期間中の17日には,現地見学会として穂高砂防観測所が観測対象としている蒲田川流域(白谷砂防施設群,地獄平砂防堰堤近傍,足洗谷流砂観測水路),上高地地域(上々堀沢土石流観測サイト,八右衛門沢土石流対策施設)を訪れた。会議後の19日には,希望者を募り35名で黒部川河口から宇奈月ダムまでの各所を見学した。これらの現地見学では,国土交通省北陸地方整備局の神通川水系砂防事務所,松本砂防事務所,黒部河川事務所の皆様に多大なご協力を頂いた。

会議開催前の13日にも,藤田教授,竹林准教授,竹門准教授,堤准教授がガイド役を務め,鴨川見学会と宇治川オープンラボラトリー見学会を企画し,小人数ではあるが希望者が参加した。

 

4.礫床河川現場

前回,2010年にカナダで開催されたGBR7において,今回の日本開催が決定して以来,5年間をかけて会場選定やプログラム構成,招待講演の論文編集等の様々な開催に向けた準備を行い,ようやく開催にこぎつけ,無事終了することができた。準備期間から開催期間にかけて,先に述べた国土交通省の各事務所をはじめ,多くの方々から多大な協力を頂いた。また,Jonathan Laronne教授が 実行委員会に参画されて会議実施に向けて尽力された事も大きな助力となった。ここに記して謝意を表します。次回のGBR9は2020年にチリで開催されることが決まっている。

 

 

 

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写真1 参加者の集合写真

  

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写真2 前日の現地見学会の様子

(鴨川の生態調査,地元の方々も巻き込んで楽しい見学会となった)

  

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写真3 現地見学会の様子(穂高砂防観測所近傍の足洗谷観測水路)

  

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