宇治川オープンラボラトリーに津波再現水槽を新設、併せて流起式可動防波堤の実験を公開
- 研究報告
2014 年7 月16 日、流域災害研究センター宇治川オープンラボラトリーにて「津波再現水槽ならびに流起式可動防波堤の公開実験」を行いました。公開実験ではレベル1 津波(100 年に1 度程度の津波)、レベル2津波(1000 年に1 度程度の巨大津波)を想定した津波を造波し、水槽の性能および防波堤の動作状況を公開しました。報道関係者、一般の方、総勢65 名にご参加頂きました。実験終了後は活発なご質問を頂き、大盛況に終わりました。
新しく建造された津波再現水槽
この水槽(図1)の最大の特徴は3 つの造波方法を連動させて複雑な波形、より実際の津波に近い波・流れを再現できることにあります。具体的には、①ピストン型造波装置;通常の造波方法で造波板を前後に動かし波を発生、②流れ発生装置;ポンプにより周期の長い流れ波を発生、③水塊落下式装置;水槽上部に水を貯め、それを一気に落下させ津波(段波)を発生という3つの方法です。これらを組み合わせることにより従来の造波水槽よりも複雑な波を再現することが可能です。
流起式可動防波堤の概要
可動防波堤は広域沿岸災害の初期対応、復旧活動の要となる港湾施設における被害の軽減、ならびに、直接的操作による人的な被災リスクを無くすために開発されています。流起式可動防波堤は港湾施設の湾口部に設置された既存の防波堤の開口部に設置することを想定しています(図2)。この防波堤は上面が平板、下面が円弧の形状をした扉体(堤体)をメインとし、その扉体の上下に固定ベルトを交差して連結しています。通常時は下部基礎部に設置された上に凸の円弧上台座に水平に静置されています(図2(A))。設定した速度以上の津波や潮流が生じた場合、扉体が基礎台上で回転し、起立する機構になっています(図2(B)、(C))。この津波再現水槽ならびに流起式可動防波堤は、今後の南海トラフを震源とする巨大地震津波対策の有効なツールとなるとともに、防災計画にも有用な役割を果たすことが期待されます。
図2 流起式可動防波堤の設置想定図;(A)通常時、(B)津波来襲時、(C)引き波発生時
(流域災害研究センター 東 良慶)