森信人教授、何東政特定研究員、宮下卓也助教らのレビュー論文Giant tsunami monitoring, early warning and hazard assessment が、2022年8月23日付Nature Reviews Earth & Environment 誌に掲載されました。
地震によって引き起こされる巨大津波は、沿岸の住民や生態系、インフラに壊滅的な災害をもたらします。特に、2004年のインド洋大津波(死者23万人)と2011年の日本海大津波(死者2万2千人)により、津波被害を軽減するための様々な研究展開が行われました。この論文では、津波の発生、伝播、モニタリング、特に早期警報システムと長期的なハザード評価評価の研究開発に焦点を当てて、近年の研究成果をレビューしています。
近年沖合に設置された高密度の海底圧力計からリアルタイムで津波の波高データが得られるようになり、数値モデルの進歩と相まって、海岸付近の津波予測を迅速に行うことが可能になりました。日本では地震発生後3分以内に津波警報がアナウンスされます。このような早期警報システムは、避難のために必要な時間を与え、人命を救うために不可欠です。一方で、防災計画や構造物による津波防災減災対策が実施できるように、確率的な津波ハザードアセスメントによる長期的な津波リスクの評価の研究開発も必要です。今後は、津波浸水、被害リスク、避難等のモデリングの改善、海溝軸における巨大地震の発生や断層破壊特性の解明と確率論的津波ハザードアセスメントの不確実性の軽減について研究開発を進める必要があります。