マングローブに対する波浪の抵抗力をパラメータ化――3次元模型を用いた実験の成果

  • 研究報告

防災研究所の張哲維 (CHANG Che-Wei)特定助教、森信人 同教授は、港湾空港技術研究所、東北学院大学と共同研究を行い、3Dプリンターを用いたマングローブの3次元模型を用いた水槽実験により、海の波がマングローブに作用する力をパラメータ化しました。本研究の成果は、2022年6月8日に、国際学術誌「Journal of Geophysical Research: Oceans」にオンライン掲載されました。

 

 

近年、気候変動による沿岸域のリスクが増加しつつあると考えられつつ一方、海岸林等の生態系を活用した沿岸災害の軽減策として「グリーンインフラ/ Eco-DRR (Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)・自然を活用した解決策(Nature-based Solution)」の価値が注目されています。マングローブの、複雑な樹形(特に支柱根、気根)による沿岸災害の軽減効果については、広く知られています。しかし、ほとんどの研究は、マングローブの形状構造の複雑さを簡略化して評価しており、波浪の減衰効果の定量化が課題となっていました。

 

 

本研究では、現地において3Dスキャンしたマングローブの構造を解析し、これを3Dプリンターで縮小印刷したマングローブの3次元模型を作成し、複雑な樹形を高精度に再現した水槽実験を行いました。マングローブの周囲流速と模型の作用波力を直接に測定し、複雑なマングローブの支柱根の鉛直構造を考慮し、マングローブに対する作用力(特に抵抗力)の新しいパラメタリゼーションを行いました。本研究成果は、マングロー ブによる高潮・波浪や津波の減衰効果を評価する数値モデルへの適用など幅広い活用が期待されます。

 

 

 

図 1: 国內外のマングローブ林の例(左: 西表島、右: キリバス)

 

図 2: マングローブを高精度に再現した3次元模型と水槽実験(スケッチ)を示す