角哲也教授が2020 年度ダム工学会論文賞(Ⅳ類 維持管理部門)を受賞しました。詳細は以下のとおりです。
- 受賞者 :木戸研太郎(水資源機構)・角哲也(京都大学防災研究所)・道広有理(日本気象協会)・木谷和大(日本気象協会)
- 賞の名称:2020 年度ダム工学会論文賞(Ⅳ類 維持管理部門)
- 受賞業績: 長時間アンサンブル降雨予測を用いた大型台風接近時における効果的なダム事前放流方法の検討
- 受賞日 :2021年5月20日
ダム工学会論文賞は、ダム工学会が刊行する論文集「ダム工学」及び、これと同等の会誌にダム工学に関わる独創的な論文を発表し、ダム工学における学術、技術の発展に著しい貢献をなしたと認められた本会会員である個人または本会会員を含む団体に対して授与されます。
また、本業績の概要は以下のとおりです。
著者らは、2018年より内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、スーパー台風に対する統合ダム防災支援システムの開発を進めている。その中心的部分の一つが、長時間アンサンブル降雨予測を活用した防災操作の高度化である。近年頻発する豪雨災害に鑑みると、アンサンブル降雨予測情報を実際のダム放流操作に活用し、防災操作時の意思決定や操作判断を支援する実務レベルでの技術開発は喫緊の課題である。
本研究は、その一環として、2019年台風第19号時における関東地方のあるダム流域における降雨データを用い、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の長時間アンサンブル降雨予測に統計的ダウンスケーリング手法を適用して、大型台風接近時における長時間アンサンブル降雨予測の適用性と効果的な事前放流方法の検討を目的としたモデル解析を行ったものである。
解析結果から、長時間アンサンブル降雨予測を用いて総降雨量、必要な洪水貯留量および回復可能量を経時的、確率論的に把握できることが示された。それに基づき、事前放流の必要可能性、貯留回復の確実性および洪水調節開始までの時間的余裕により区分し、目標時点までの時間を見据えて放流量を合理的に設定・調整する方法として「アンサンブル事前放流」を考案した。
これにより、予測の変動に対して放流流量の増減を相対的に小さく抑えることができ、安定したダムの事前放流操作を行うことが可能であることが示された。早期に事前放流を開始できることは、ダムの治水機能の向上に加えて、水位低下時の水力発電利用を高めることにもつながり、「国土強靭化=防災(ダムの治水強化)」と「グリーン社会実現(カーボンニュートラル)=再エネ最大化(ダムの水力価値向上)」に同時に貢献する技術となることが期待されている。