ひとつひとつの観測データが気象予測に与える影響を簡易に評価する手法を確認 -北極の観測データは7日先の北米気象予測の改善に貢献することも明らかに-

  • プレスリリース 研究報告

榎本剛 防災研究所教授は、山崎哲 海洋研究開発機構研究員、理化学研究所、国立極地研究所と共同で、個々の観測がどのくらい気象予測の精度を改善するか診断する手法(EFSO)を評価した結果、有効な手法であることを確認するとともに、北極の観測データは北米の6〜7日先の予測を改善することも明らかにしました。

気象予測は陸上での観測の他に衛星観測や洋上観測等から得られたデータをもとにシミュレーションされています。予測精度を向上させるためには、ひとつひとつの観測が予測へどの程度影響を与えているか(以下、本影響を「観測インパクト」という。)評価することが重要ですが、膨大な計算コストを要することからあまり行われていませんでした。

そこで本研究グループは、EFSOと呼ばれる手法をJAMSTECのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」上に実装し、一例としてEFSOが北半球の陸上で実施されたラジオゾンデによる観測インパクトを正しく推定しているかを検討しました。

その結果、EFSOは2日先までの観測インパクトの大きさを良く推定していることが示されました。特に北極の観測インパクトに限定すると、中緯度北米域の6〜7日先の予測を改善することもわかりました。

今後、過去にどこで行われた観測が大きな観測インパクトを持っているかを検証することで、効果的な観測計画の立案等に役立てることができると期待されます。

本研究成果は、2021年4月30日に、国際学術誌「Weather and Forecasting」に掲載されました。