2019年台風19号による豪雨の発生メカニズムを解明 ――湿度100%で絶対不安定な大気層の役割

  • プレスリリース 研究報告

2019年10月に日本列島に上陸した台風19号は、最低気圧が915 hPaに達した猛烈な台風で、箱根で日雨量が922.5ミリ(日本の観測史上第一位を更新)に達するなど東日本各地で記録的な大雨をもたらし、洪水・氾濫など激甚な災害を引き起こしました。

 

 

京都大学防災研究所 竹見哲也 准教授らの研究グループは、広域の気象データにより豪雨時の気象状況を分析しました。その結果、次のような豪雨の発生原因が明らかになりました。すなわち、当時は地面付近から上空まで大気の相対湿度がほぼ100%と極めて湿った状態にあり、その中で絶対不安定(湿潤絶対不安定)な大気層(MAUL:モール)が台風周辺部に持続的に形成されました。湿潤絶対不安定な層は、少しのきっかけがあればただちに積乱雲が発達するような極めて不安定な状況にあります。この絶対不安定な大気層が東日本に向かって波状に流れ込み、積乱雲が持続的に発達したたために、記録的な豪雨が発生したのです。

 

 

今後は、このような湿潤絶対不安定層の出現特性を他の豪雨イベントでも調べ、豪雨をもたらす積乱雲の発達メカニズムをより深く理解し、より精度よく予測するための研究が必要です。

 

 

本成果は、2020年2月21日に国際学術誌「Scientific Online Letters on the Atmosphere (SOLA)」にオンライン掲載されました。

(図制作:はやのん理系漫画制作室)