中川一 新所長からのメッセージ

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防災研究所長 中川 一

 
 皆様、平成29(2017)年4月1日に防災研究所の所長に就任しました中川一(なかがわ・はじめ)です。昭和56(1981)年4月に砂防研究部門(現在の流域災害研究センター流砂災害研究領域)助手に採用されて以来、36年間防災研究所でずっとお世話になってきました。ですので、大変愛着のある研究所であり、この研究所の所長を務めることに深い感慨がございます。心を新たにして防災研究所のために、ひいては京都大学のために粉骨砕身頑張ってまいりますので、御指導、御協力、御支援を賜りますよう、よろしくお願い致します。

 

 まず皆様にご紹介したいこととして、防災研究所にこの4月から新たな研究スタッフが加わります。地盤災害研究部門地盤防災解析研究分野に渦岡良介教授、地震防災研究部門耐震機構研究分野に池田芳樹教授、流域災害研究センター流域圏観測研究領域に吉田聡准教授、社会防災研究部門防災技術政策分野にFlorence LAHOURNAT講師、気象・水象災害研究部門気象水文リスク情報(日本気象協会)研究分野(寄付研究部門)に竹之内健介特定助教の5名です。新たな技術スタッフも1名加わります。栗栖理恵技術職員です。新たに防災研究所のメンバーになった方々には、早く防災研究所に馴染んで、研究教育や技術支援の素晴らしい成果を期待しています。
 さて、所長としての抱負を述べておきたいと思います。まずは研究についてです。防災研究所の特徴の一つに15の隔地観測所・実験所をはじめ多くの施設設備を有していることが挙げられます。これは京都大学の他の研究科や他大学でも例を見ない大変ユニークな点です。防災研究所は全国共同利用・共同研究拠点であり、これらの観測所・実験所は全国の研究者の共同利用に供せられています。共同研究等を通してこれまで多くの研究者に利活用いただき、貴重な研究成果が創出されてきました。これからも防災研究所であるがゆえに、そして、防災研究所の研究者であるがゆえに可能となるユニークな研究に挑戦し、そのような研究環境の整備を支援していきたいと思っています。とくに、貴重な研究戦力である若手の研究者にはユニークでチャレンジングでみずみずしい研究を行ってほしいと思っています。チャレンジ無くして研究に進歩や進化はあり得ません。そういう意味で、若手研究者を色々な意味でサポートしたいと思っています。若手研究者の皆さんはぜひ要望を聞かせてください。いっぽう、マチュアな研究者には、博士課程の学生の研究教育指導をしっかりと行い、研究成果をインパクトファクターの高い論文に投稿して防災研究所の研究レベルをさらに高めることを期待します。
 次は教育と国際交流についてです。先々代の大志万直人元所長の時代にGADRI(Global Alliance of Disaster Research Institutes, 世界防災研究所連合)が立ち上がり、以来、防災研究所がその事務局を担っています。このGADRIには130におよぶ防災研究機関等が登録されています。また、防災研究所は56の海外の研究機関等と学術交流協定を締結しています(平成29(2017)年3月末現在)。さらなる発展を目指すとともに、GADRI登録機関の中でまだ学術交流協定を締結していないところがあればさらに交流協定を締結して国際的に学術交流、人的交流を深めていきたいと考えています。グローバル化を達成するために、ここを通じて防災・減災の研究に携わる世界の研究機関、JICA、ユネスコ等の国際機関等との連携及び国際協力により、さらなる国際貢献を図ってまいります。また、頭脳循環プログラムを利用して若手研究者や学生の派遣をお手伝いしたいと思っています。
 つぎに広報・社会連携活動についての抱負です。防災研究の成果を世の中で役立てる、役立ててもらうことが重要です。著名なジャーナルへ論文投稿し、それが論文として掲載されることは第一義的に重要であります。しかし、それだけでは防災研究成果は世の中で役に立たないことが多いのです。防災研究所の基本理念には「現実社会における問題解決を指向した実践的な研究を実施し、安全・安心な社会の構築に資することを存立理念とする」、そして、社会との関係において「地域および世界に開かれた研究所として、地域社会や国際社会との連携や知の伝達を図る」とあります。この理念に則って、公開講座やキャンパス公開を通して一般の人々にも防災研究の成果をお知らせし、今後も施設設備を活かした地道でユニークな研究や高大連携事業、広報・社会連携活動など、改良を加えながら高品質な内容を提供し続けていきたいと思っていますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 さらに、データベースについて言及しておきたいと思います。巨大災害研究センターの前身である防災科学資料センターでは自然災害データベース「SAIGAI」(http://maple.dpri.kyoto-u.ac.jp/saigai/)を構築、維持管理してきました。現在、10万件以上のデータが蓄積されていますが、データ収集・入力作業の負担、検索システム改善の必要性、掲載資料内容についてのポリシーの明確化、といったデータベースの根幹にかかわることで課題が山積しています。自然災害研究協議会においてデータベースについてこれまで種々検討されてきましたが、課題も見えてきましたので、自然災害研究協議会、研究教育委員会、巨大災害研究センター、技術室他とでタスクフォースを構築し、これらの課題解決に向けて取り組む予定であります。ご支援、ご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。
 最後になりますが、防災研究所の教職員は高い倫理観をもって研究・教育・社会貢献に取り組んでいかなければなりません。最近でも、研究機関における不正経理、研究不正に関する新聞記事等が後を絶ちません。これを他人事とすることなく、教職員全員で不正を未然に防ぐことに努めてくださるようお願いいたします。

 

 以上の課題について、新執行部は、将来計画担当副所長として堀智晴教授、研究・教育担当副所長として澁谷拓郎教授、広報国際担当副所長として牧紀男教授、自己点検・評価委員長として飯尾能久教授の体制で、これからの2年間、研究所内外の用務を担当させていただきます。関係各位におかれましては、何卒よろしく御指導、御協力、御支援を賜りますようお願い申し上げます。