バヌアツ共和国タンナ島の在来建設技術の高度化を支援するJICA草の根事業を開始

  • 研究報告

 本研究所はJICA(独立行政法人国際協力機構)との業務委託契約に基づき、JICA草の根技術協力事業「バヌアツ共和国タンナ島における在来建設技術の高度化支援」(事業実施代表者: 西嶋一欽 気象水象災害研究部門准教授)を始動しました。サイクロンが多い南太平洋に位置するバヌアツ共和国では近年、同国古来の伝統的な建物がサイクロン襲来時に避難場所として活用されています。本事業はそうした伝統建築の耐風性能の向上を目的として実施されます。

 本研究所および地球環境学堂の研究者を中心とする本事業の推進グループは、2016年9月22日~23日にかけてバヌアツ共和国でキックオフミーティングを開催し、現地カウンターパートであるタンナ島Lume’s RTC (Rural Training Center)およびバヌアツ教育省の関係者らと本事業への期待や推進について意見交換しました。

 本研究所では2015年3月にバヌアツ共和国を襲ったサイクロンパムの被害調査およびタンナ島における在来建設技術に関する現地調査をそれぞれ、バヌアツ気象災害局、南太平洋大学の研究者と合同で実施してきました。現地調査を通じて、タンナ島には在来建設技術を中心にした在来知に基づくサイクロン対策が存在していること、これらの対策が国外からの建設技術の導入により失われつつあること、外来建設技術の導入が必ずしも減災には結び付いていないことなどが明らかになりました。こうした調査結果をうけ本事業では、バヌアツ共和国の気候風土の中で受け継がれてきた建築物に遺る文化的特徴をそのまま温存しながら、そこに工学的知見を加えて改良し、伝統建築がサイクロン時のシェルターとして現地村落の減災によりいっそう寄与することを目指しています。

 キックオフミーティングではバヌアツ共和国が自身の文化や伝統をベースにした社会、環境、経済の開発を進めようとしていること、ならびに同国政府が描く教育システム改革における本事業の位置づけを再確認しました。西嶋准教授らの事業推進グループは、京都大学が有する科学的な知見を活かして、タンナ島に根付いている在来知が有する自然災害対応力を工学的に再評価し、現地の文化や伝統を継承しながら在来建設技術を高度化するタンナ島Lume’s RTCの活動を支援します。

 

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バヌアツ教育省長官らとの会議

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地元で手に入る建材で建てられたタンナ島の伝統建築物

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コンクリートの瓦礫が撤去されないままになった小学校

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Lume’s RTC関係者ならびに周辺村落の長たちとの会議