カルデラにおけるマグマ蓄積形態と蓄積速度 ―地下における3次元弾性定数と熱プロセスの考慮の重要性―

  • 研究報告

カルデラにおけるマグマ蓄積形態と蓄積速度

―地下における3次元弾性定数と熱プロセスの考慮の重要性―

 

 井口正人 防災研究所教授、中道治久 同准教授、ジェームス・ヒッキィ ブリストル大学博士(現エクセター大学講師)、ジョアチム・ゴッツマン 同准教授の研究グループは、鹿児島湾北部に位置する姶良(あいら)カルデラ周辺の地殻変動観測データの解析から、姶良カルデラ直下のマグマ蓄積の場所と形態、マグマ蓄積速度の推定に成功しました。
 本研究成果は、2016年9月13日18時に英国の科学雑誌「Scientific Reports」でオンライン公開されました。

 

概要

 人々の生命や財産を脅かすような大規模噴火は数十年から数百年間隔で発生しています。噴火の源となる地下のマグマの現在の蓄積量が分かれば、噴火間隔を考慮することで大規模噴火がどの程度差し迫っているかを評価することができます。

 桜島は姶良カルデラの南部に位置する活動的な火山で、15億立方メートルのマグマが放出される大規模噴火だった大正噴火の際は住民が島外避難をしました。その後の観測により姶良カルデラにおけるマグマの再蓄積が進行していることが明らかになっています。

 マグマの蓄積に伴う火山の変形をモデリングするには場所により弾性的性質が変わらないような均質な岩石の中でのマグマ溜まりの膨張収縮を反映した モデルが長年用いられてきましたが、本研究では地中の弾性が箇所によって異なることを考慮し、膨張収縮源(圧力変化源)としてラグビーボールのような回転 楕円体を仮定してGPSを利用した基準点の観測データを解析しました。その結果、扁平楕円体の圧力変化源が姶良カルデラ北東部の深さ13キロメートルに位置することが分かりました。そして、熱プロセスを考慮することにより年間1150万立方メートルの速度でマグマが姶良カルデラに蓄積されていることが分かりました。この蓄積速度は従来の熱プロセスを考慮しない推定の倍程度です。

 おおよそ130年で大正噴火の際に放出したマグマ量に達しますが、この年数は大正噴火と安永噴火(1779年)との間隔にほぼ相当します。なお、大正噴火から現在まで既に102年が経過しているため、現在は大規模噴火発生のポテンシャルが高まってきている状態と言えます。

 

イメージ図

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