海底地震計記録で読み解く地震空白域の将来 -メキシコ・ゲレロ州沖合の地震空白域のスロー地震活動の発見-

  • プレスリリース 研究報告

伊藤喜宏 防災研究所准教授、プラタ-マルティネス ライムンド 理学研究科博士課程学生、井出哲 東京大学教授、篠原雅尚 同教授らは、メキシコ国立自治大学、カリフォルニア大学バークレー校と共同で、メキシコ太平洋沿岸部に設置された海底地震計記録を解析しました。その結果、メキシコ太平洋沖で過去100年間に地震が発生していない領域(地震空白域)でゆっくりとプレート境界がずれ動くスロー地震が発生していることを初めて明らかにしました。

 

 

環太平洋地域のプレートの沈み込み帯では、大地震と同様にスロー地震が繰り返し発生しています。現在世界で報告されているスロー地震について、特に海底下で発生するスロー地震活動の理解は、海底観測網が整備されている地域に限られていました。本研究グループは日本・メキシコによる国際共同研究(JST-JICA SATREP「メキシコ沿岸部の巨大地震・津波災害の軽減に向けた総合的研究」(日本側代表:伊藤喜宏))の一環として、メキシコ合衆国ゲレロ州の太平洋沖合の地震空白域の直上に海底地震観測網を構築しました。2017年11月から2018年11月にかけて得られた地震記録を解析した結果、過去100年間に大地震が発生していない地震空白域内でスロー地震の発生が確認されました。観測されたスロー地震活動は、地震空白域が周囲と比べてプレート間の固着が小さく、結果として空白域を震源とする大地震の活動が周囲と比べて低調であることを説明します。また、この領域で想定されていた巨大地震の発生リスクがこれまでよりも低い可能性を示します。

 

 

本研究成果は、2021年6月28日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。