大地震とスロースリップの相互作用――メキシコにおける3つの大地震の連鎖的発生のメカニズム

  • プレスリリース 研究報告

国立大学法人京都大学防災研究所の伊藤喜宏准教授、西村卓也准教授らは、メキシコ国立自治大学、米国ロードアイランド大学、カリフォルニア大学サンタクルズ校らと共同で、メキシコで発生した大地震とスロースリップの地殻変動及び地震計記録を解析しました。その結果、2017年から2019年にかけてメキシコで発生した3つの大地震とスロースリップの連動と2つの関連性を明らかにしました。

 

プレート境界等で繰り返し発生する大地震が、周囲で発生するスロースリップにより誘発されることや、逆に地震が周辺のスロースリップを誘発することなど、大地震の発生サイクルでは、スロースリップが大地震の発生に大きく影響すると考えられています。スロースリップによる巨大地震の誘発や、大地震によるスロースリップの誘発現象などはこれまで、個別にいくつかの地域でそれぞれ報告されてきましが、巨大地震とスロースリップの相互作用を詳しく調べた研究はこれまでにほとんどありませんでした。我々は日本・メキシコによる国際共同研究(JST-JICA SATREP「メキシコ沿岸部の巨大地震・津波災害の軽減に向けた総合的研究」(日本側代表:伊藤喜宏))の一環として、メキシコ合衆国のゲレロ州の太平洋沿岸部のゲレロ地震空白域周辺のGNSS及び地震観測網を強化し、2017-2018年にかけてメキシコ中南部で発生した3つの大地震およびその周辺で発生したスロースリップの同時観測に成功しました。観測された地殻変動データの解析の結果、M8クラスのスラブ内巨大地震がプレート境界の力学的特性を大きく変化させて、付近で定期的に発生しているスロースリップの発生サイクルを大きく変化させ、さらにスラブ内及びプレート境界で発生したM7クラスの2つの大地震を誘発するなど、大地震とスロースリップの相互作用として一連の活動が説明できることを示しました。

 

本成果は、英国科学誌電子版「Nature Communications」に4月12日付け(日本時間)で掲載されました。

 

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