2019年を迎えて[中川一所長からのメッセージ]

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京都大学防災研究所長 中川 一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆様、新年、あけましておめでとうございます。京都大学防災研究所長の中川一です。新年を迎えるにあたり、一言ご挨拶申し上げます。

 

 

昨年を振り返ってみますと、喜ばしいこととしてはまず、京都大学の本庶佑特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されました。本学の一員として大変うれしく、また、誇らしく思いました。防災研究の分野においても基礎研究の重要性を再確認し、それを基盤として実践科学をより深化させていきましょう。

 

また、もう一つは、当研究所の火山活動研究センターに新たに火山テクトニクス研究領域を設置し、その准教授ポストが新たに認められたことです。現在、人事選考を行っているところですが、ぜひ、この分野での研究を力強く牽引してほしいと期待しています。

 

そして、もう一つ、社会防災研究部門にも新たに地域医療BCP研究分野の設置が認められました。この分野は、防災学と医学関連分野との連携により災害発生直後の災害医療の確保、その後の医療体制の維持を可能とする医療システムの構築、地域医療BCPに関する研究を行おうとするものです。定員はまだついておらず、京都大学医学部附属病院の教員が兼任で担当する形で2019年4月からこの分野をスタートさせる予定です。これまでもこの分野で共同研究などを実施してきましたが、当研究所内に地域医療分野の研究を行う組織ができることで、実質的にその分野の研究を担っていることを内外に明示できることになります。

 

 

一方で、昨2018年には残念な出来事もありました。

 

2018年はわが国において自然災害が多発した年でした。とくに、本学の創立記念日である6月18日に、M6.1,最大震度6弱の大阪府北部地震が発生しました。これにより当研究所でも建物被害などが発生しました。補正予算で復旧費がつきましたので被災箇所の修繕を速やかに実施する予定です。また、本学では教職員・学生の安否確認システムを導入していましたが、うまく機能したとは言い難いものでした。これをシステム改善のための良い経験としていく必要があります。

 

6月末から7月上旬にかけては西日本豪雨(2018年7月豪雨)災害が発生し、岡山県倉敷市真備町などでの破堤氾濫災害や広島県などでの土砂災害などで200人以上の方が亡くなられるという大災害が発生しました。

 

9月4日には近畿を中心に台風21号による強風・高波・高潮被害が発生しました。その2日後の9月6日にM6.7、最大震度7の北海道胆振東地震が発生し、地震によって誘発された地滑りなどで41名の方が亡くなりました。

 

これらの自然災害で多大な犠牲や被害が出ましたが、多くの所員が目下これらの災害調査に取り組んでおり、貴重な研究成果が出ることを期待しています。きたる2月19・20日の研究発表講演会でそれらの成果を発表する予定です。

 

もうひとつ、国際共同利用・共同研究拠点への申請は残念ながら不採択という結果になりました。ヒアリングの際や不採択の理由書に、研究所の規模の割に科研費の獲得額が少ない、国際共著論文の数が少ない等の指摘がありました。これにめげず、所員一丸となってこれらの課題を克服し、捲土重来を目指して行く所存です。

 

また、共同利用・共同研究拠点の中間評価結果が昨年発表されました。当研究所はA評価で、最高レベルのS評価には届きませんでした。一昨年度の経理不正問題などにより最悪の評価も覚悟していましたが、なんとかA評価をしてもらえたことで胸をなでおろしました。最終評価結果ではS評価が得られるようさらなる精進を重ねて行きたいと思います。

 

 

さて、新たな2019年は災害のない年であってほしいと願っています。そして、所員におかれては昨年の国内外の災害調査研究で得られた多くの成果をとりまとめていただきImpact Factorの高いジャーナルへどしどし投稿して、国際共著論文等への貢献を期待しています。

 

また、概算要求や共同利用・共同研究拠点のプロジェクト申請についても、今年こそ、執行部や研究企画推進室等でしっかりと準備して採択されるよう頑張ります。

 

さらに、懸案のデータベース「SAIGAI」所蔵資料の整理については、自然災害研究協議会による計画のもと2018年度中には処理を終えられるものと期待しています。

 

 

以上、当研究所のさらなる発展を祈念して年頭の挨拶とさせていただきます。どうか倍旧のご指導をお願い申し上げます。