特集│火山と向き合うー防災研の火山防災研究

火山噴火後の土石流をみこした観測研究

宮田 秀介
MIYATA Shusuke
農学研究科森林科学専攻
山地保全学分野 准教授

土石流は水と土砂の混合物が一体となって渓流を流れくだる現象であり、梅雨前線や台風による豪雨で毎年のように被害をもたらしています。火山がひとたび噴火すると、周辺の渓流では土石流が発生しやすくなることが知られています。山腹や渓流内にもたらされた火山灰や火山噴出物は不安定で雨や流水で流されやすい状態にあります。さらに、火山灰で覆われた山腹斜面では雨水が浸透しにくくなるため、弱い雨でも渓流に素早く流水が集まり、火山灰や火山噴出物と流水が混ざって土石流となり流れ下ります。

土石流の現象を理解し予測モデルを構築するには現地での観測が不可欠です。そこで1962~1963年の噴火を契機に穂高砂防観測所が設立され、焼岳(長野県・岐阜県県境)の北西斜面に足洗谷観測流域を設定して(図1)、土石流の観測を行ってきました(写真1)。1963年以降は噴火がなく、時間経過とともに土石流の発生頻度が減ったため、近年は洪水によって河川を運ばれる土砂の量を観測し、噴火の影響があまりない状態での水と土砂の動きを明らかにしようとしています。観測研究の成果を予測モデルと組み合わせて、次の焼岳の噴火時にどのようなことが起きるかをあらかじめ予測しようという研究を行っています。

 

図1 足洗谷観測流域の様子。点線は足洗谷観測流域の範囲を示す

写真1 1979年8月22日の黒谷での土石流(左)前(右)直後の様子。 8 mmビデオで撮影された動画による