特集│火山と向き合うー防災研の火山防災研究

火山性津波

森 信人
MORI Nobuhito
気象・水象災害研究部門
沿岸災害研究分野 教授

津波は地震によって発生するもの以外に、火山活動によって引き起こされる場合があります。これらは、火山性津波と呼ばれます。火山性津波は火山の爆発や噴火、地形変化等によって引き起こされ、いくつかの発生原因と特徴があります。図1に示すのは、おもな発生原因であり、海底噴火、カルデラの崩壊、爆発による気圧波、火砕流、地すべり・山体崩壊、海底地すべりが挙げられます。

海底噴火と気圧波以外は、火山活動により何らかの形で地形変化することにより発生する津波です。海底噴火による津波はマグマ水蒸気爆発等をともなう場合があり、局所的に大きな津波が発生する場合があります。気圧波による津波は、1883年クラカタウの噴火以来発生していませんでしたが、2022年フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイの噴火により再び観測されました。山体崩壊による大規模な津波は、1792年雲仙岳眉山のいわゆる島原大変肥後迷惑が挙げられます。また、海底地すべりによる津波は、 1741年寛保津波が観測されています。

火山性津波は、火山活動の予測と連動しています。遠地で起こる火山性津波の影響は気圧波が主であり、到達時間が長いためにある程度の予測は可能です。一方で、近地で起こる火山性津波は、山体崩壊のように陸地で揺れが観測される場合と、海底地すべりのように揺れが観測されない場合があり、予測が難しいのが現状です。

図1 火山性津波の発生要因