平成9年度京都大学防災研究所・研究集会
「地殻の不均質構造と内陸大地震の発生」の報告

共同研究集会(一般)9K−4

 上記研究集会は12月11〜12日に防災研究所で開かれ、全国の大学など研究機関から70名以上の参加があった。初日はこれまで実施された全国の大学による合同観測のデータなどを用いた研究成果を中心に話題の提供が行われ、活発な討論がなされた。集会には地震の研究者ばかりでなく、地質、岩石・鉱床の研究者も参加し、地殻の不均質構造と地震の発生機構について多面的に議論が行われた。特に、平成6−7年(1994-1995年)に実施された、飛騨地域を中心とする観測データの解析を中心に、地殻の波動の速度、減衰の不均質と地震の発生に関する議論が行われた。飛騨山脈の中心部、深さ数kmから10km程度の所に低速度、高減衰地域があることが観測データにより確認された。これらの地域は強度が小さいと考えられ、地殻の変形の核になる可能性があり、変形がどのように地震発生に結びつくかのモデルが出された。さらに、熱構造との関連、地殻内の高温高圧流体の挙動に関する議論に及んだ。
 次の日は飛騨地域以外の反射面など、火山地域以外の大地震についての同様な議論がなされた。また、地殻内の流体が地震発生に寄与するとした場合、その存在の可能性と一定時間それらが貯まっていてある時に噴出する可能性が議論された。地震が繰り返し発生するためには流体が流れるだけではなく、「目づまり」を起こすことが重要であり、その機構についての鉱床学からの提案がなされた。
 午後には、今後の研究方針が「日本列島構造探査計画」の作成を目指してパネルディスカッションの形で行われ、いくつかの具体的な提案がなされた。また、構造探査と地震予知がどう結びつくかについて議論された。しかし、時間が不足し十分に案を煮詰めるところまではいかなかった。それらについて、今後も継続的に議論を行うことが確認された、研究会終了後も数人の有志によって議論がされたことを付け加えておく。
 話題提供者の方々、熱心に討論くださった参加者の方々に、この場を借りて、厚く御礼申し上げます。
(伊藤 潔) 

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