場 所:京都大学木質科学研究所・木質材料実験棟(木質ホール)
参加者:58人(内訳は,大学 28,民間 18,国立研究機関 2,財団法人 5,建設省 5)
河川流域の水文現象を解明し,土石流・洪水などの災害を防止し,水資源の確保と水環境の保全のための研究を進めていく上で,降雨量や河川水位・流量,河川水質などの河川水文データの収集・解析は重要な意味を持っています。
従来,計算機資源の制約やデータ収集の困難さから,河川流域内の水文・流出現象の理解・解析に基づいた水文モデルの構築はあまり現実的なものではありませんでした。しかし,最近では,大容量高速の計算機が利用できるようになってきました。流域の標高データや地質のデータも計算機に読み込むことができるような形式で整備され,気象レーダによって,広域の時間的空間的な降雨データが得られるようになってきました。河川流域内で起こっている物理現象に即して,現象をモデル化し,解析していくための条件が整って来ています。
また,近年,情報通信ネットワークが急速に発展してきました。河川水文データを情報ネットワークを通して取得し,利用することも可能になってきました。場合によっては,現象が起こっているときにデータを取得し,解析して予測に役立てるということも可能になってきています。現に起こっている現象の観測情報だけでなく,過去に起こった現象のデータを参照できれば,災害対応に非常に役にたつでしょう。
このように,河川水文データの利用は新しい局面を迎えています。土木学会水理委員会水文部会では,こうした環境に対応して,河川水文データベースの構築と情報ネットワークによる利用に関する研究部会を設けて,研究を進めています。
1996年に全国共同利用研究所として改組された京都大学防災研究所でも,水災害研究部門で,河川水文データベースの構築とそのネットワーク共用化を重要な研究課題のひとつとして取り上げ,特定研究集会を開催することを共同利用委員会に申請して,認められ,標記の研究集会を開催しました。この集会への参加の呼びかけは,水文・水資源学会誌にも掲載させて戴きました。
現在,建設省でも水文・水質データベースを構築し,インターネットを通して公開するよう具体的な検討がなされています。水環境計画や水管理にも,河川水文データをどのように集積し,利用していくかの検討が重要です。また,地球科学研究という観点から,河川水文データを他の地球観測データの公開・利用の中で考えていくことも重要です。
河川水文データベースをどのように構築し利用していくについて検討すべきことは非常に多く,さらに議論を継続し,研究を進めていく必要がありますが,この研究集会で,河川水文データベースについて議論していくべき領域や議論の枠組に関する合意が得られたと思われます。
さらに,河川水文データベースに関しては,議論・情報の交換をメイリングリスト
hydrodb-ML@rdp.dpri.kyoto-u.ac.jp
で続けていきたいと思います。このメイリングリストへのお問い合わせは,
hydrodb-ML-request@rdp.dpri.kyoto-u.ac.jp
へお願いします。
水災害研究部門:椎葉 充晴・立川 康人 水資源研究センター:宝 馨
なお,上記研究会は,以下のようなプログラムで行われました。