インドネシアの訪問


 

 防災研究所が行っている国際共同研究「中国及びインドネシアにおける自然災害の予測とその防御に関する国際共同研究(IDNDR)」の相手国であるインドネシアの鉱山エネルギー省地質鉱物資源総局(I−1関係)の火山調査所に平成8年9月17日(火)〜25日(水)まで、火山活動研究センターの井口助教授と園田技官に同行する機会を得ることになった。
インドネシア訪問の初日である9月17日(火)の10時に関西国際空港ロビーで井口助教授と園田技官と待ち合わせての出発であるが、最初に驚いたのは、各人の荷物はトランクと手持ちバックだろうと思っていたところ、4台のワゴン車に満載されたダンボール箱8個(総重量160kg)が同行することである。また、これら荷物の出入国に際し、通関事務手続きが大変であり、先生方のご苦労を痛感する次第である。幸い、1994年10月にインドネシア大蔵省令が改正され、京都大学防災研究所は通関に際して、税金免除の特典が与えられる46番目の国際機関となった。この改正には、鉱山エネルギー省地質鉱物資源総局と火山調査所が尽力され、共同研究に対するインドネシア側の期待の大きさを感じる。
 2日目は、訪問の目的である火山調査所との国際共同研究の状況把握と今後の研究進展について火山解析部長のスクヒヤール博士と打ち合わせを行い、オニイ氏(文部省国際留学生で来日しており、私も面識があり、さらに日本語で話ができホットする。)の運転で、タングバンパラフ観測所(バンドン市)・グントール観測所(ガルート市)に案内してもらった。特に、グントール観測所の観測員(3名)のひたむきな仕事ぶり(井口助教授の指導に対し、積極的に質問を行ったり、機器点検等の作業を手伝う姿勢に)に私は感銘を受けた。
 オニイ氏とはバンドン市で別れ、私たちはジョグジャカルタ市のメラピ火山観測所を訪問した。プルボ博士の案内でメラピ火山のカリウラン観測所からババダン観測所を見学していたときに、突如5分間程度、メラピ火山が見る事ができ(プルボ博士も10日間全然メラピ火山を見ていないし、この時季にメラピ火山を見えることが希であるといわれ)感激した。
 訪問の旅の最終日に、井口助教授とジャカルタ市で別れ、園田技官ともに9月25日に帰国した。
 今回訪問したインドネシアには、129の活火山が存在し、1600年以降に噴火記録がある火山の数は79もある。そのうち70の火山に73の観測所が設置され、2〜3名の観測員が常駐し、24時間体制で火山監視に当たっており、そこで得られた観測データは毎日3回無線電話で火山調査所に集約され、分析が加えられている。
 この火山調査所の使命は、火山災害の軽減であり、そのため危険予想図が早くから準備され、噴火の際に予想される災害の種類と程度に応じて2〜3種類の危険区域を示しており、また、それぞれの区域の面積と人口なども記載されているため、地方の防災行政および住民の教育に利用されている。本年1月の防災研究所の研究発表講演会で、火山調査所のウィンピー所長は国際共同研究事業の成果と評価について講演した。その中で、本年1月17日のメラピ山の約20年ぶりの爆発に際して、当研究所が設置した傾斜計によって前兆が捉えられ、直前予知に成功したことを現地の新聞を示しながら紹介した。
 これらのことからも、防災研究所との国際共同研究の研究成果が火山災害の軽減に大いに役立つものと期待している。
                             経理課長 明渡志郎