第9桜島火山の集中総合観測

集中総合観測では、国立大学の火山観測所などが協力して、地殻変動を調べるために、桜島と鹿児島湾(姶良カルデラ)周辺で延長約120kmの水準測量を行ってきた。

 昭和49年度に開始された火山噴火予知計画では、火山活動を総合的に診断するために、毎年2火山を選び、全国の火山研究者が協力して、地震、地殻変動、地磁気、重力、熱、火山ガス、地下水、噴出物等の多項目の観測・調査を実施してきた(特定火山集中総合観測)。活動レベルの高い火山では、各観測項目のデータの相関関係に注日して活動を評価すること、また、現在活動レベルの低い火山では、将来、活動が活発化した場合に備えて、比較のベースラインとなる客種の基礎データを蓄積することに重点が置かれた。1983年の三宅島噴火、1986年の伊豆大島噴火、1990年の雲仙岳の噴火などに際しては、事前の集中総合観測によって得られた基礎データが、噴火機構の研究及び噴火予測に大いに役だった。
平成6年度からの第5次火山噴火予知計画では、毎年、1火山で基礎研究としての火山体内部の構造探査を、また1火山で集中総合観測を行うことになった。

 平成8年度には、11月下旬に霧島火山で平成6年に続き2回目の構造深査が、桜島火山では、昭和49年の第1回から数えて第9回日の集中総合観測が、10月から平成9年1月にかけて実施される予定である。これまでの桜島火山の集中総合観測には、毎回、30〜50名の大学や研究機関の研究者が参加していて、その成果は、報告書として取りまとめられている。今回の集中総合観測でも、防災研究所外の研究者にも観測項目毎の世話人を依頼して、火山活動研究センターが全体の調整と報告書のとりまとめを行う。地盤変動、重力、地磁気、火山ガスなど繰り返し測定の他に、基礎的な研究課題も受け入れ可能な限り、積極的に取り入れることにしている。英国Bristol大学の研究者からは、今回の集中総合観測期間中に、以前から継続している噴煙の運動に関する観測研究に加えて、噴出物の同位体の研究を新たに実施したいという申し出がある。
(火山活動研究センター)