1996年中国雲南省麗江地震とその被害に関する調査研究

麗江盆地北部で見られた飛び石
 1996年2月3日、中国雲南省麗汀:納西族自治県でM7.0地震(麗江地震)が発生し、同県下に大きな被害が生じた。IDNDRに関連する特別事業「中国における強震動予測と地震災害の軽減・防御」の分担課題が中国国家地震局雲南省地震局との間で進められているので、表題の現地調査を文部省科研費(突発災害)の補助を得て実施した。調査は、雲南省地震局、中国科学院成都山地災害環境研究所および雲南省地理研究所の共同研究として2月29日〜3月13日に行われた。調査人員と調査項目は、中村正夫氏(東大地震研:発震機構、テクトニクス、地震予報)、赤松(総括、地震動特性、被箒分布)、松波(地盤震動特性)、諏訪(斜面災害)、村上ひとみ氏(北大工:家屋の構造と被害、人的被害、災害対応)、楠田 隆氏(千葉県地質環境研:地質災害、地質環境)である。調査結果の概要を以下に記す。
 麗江納西族自治県下で、死者309人、負傷者17,057人(内重傷者4,070人)、家を失った人18万人。
MM震度9の地域は、金沙江(長江上流)に挟まれた南北65km東西25kmの長円形をしており、この南部の麗江盆地では人的被害、建物被害が大きかった。納西族の民家は木造日干し(まれに焼成)煉瓦壁である。壁の崩壊が広い範囲で著しいが、軸組の構造破壊にまで至る被害地域は集中している。ほとんどの死傷者は倒壊した壁の下敷きになったためである。麗江盆地内では、被害程度と地盤震動特性との関係を吟味するために、持ち込んだ高感度地震計により微動観測を実施した。なお、盆地北部で飛び石が数多く発見され、震源近傍の地震動は1Gを越える加速度があったものと推定される。雲南省地震局はこの地震の短期予報(1〜3カ月)を出しており、行政機関や軍が警戒体制をとっていた。このため、発災直後の災害対応が迅速に行われ、多くの負傷者をだしたものの、死者を少なくすることができた。IDNDR特別事業に、 この地震に関する研究を追加することが協議された。
納西族の民家の被害