防災研究所の改組計画

本年1月17日の兵庫県南部地震による「阪神・淡路大震災」は、5500名を超える犠牲者をはじめ多くの被災者それに莫大な損害をもたらしました。自然災箒の軽減防止を目的とする研究所の一員として申し訳なく、心からお悔やみお見舞いを申し上げますが、この大震災はまた防災研究所にとってもきわめて重大な出来事でありました。
 防災研究所では、平成5年度に行われた「研究所の自己点検・評価」にしたがって、全面的な改組の検討が進められ、その概要がとりまとめられていました。「阪神・淡路大震災」という近代的な大都市における大災害の発生とその調査分析を受けて、それ以前にまとめられていた改組計画が慎重に見直しされました。その結果、基本的な変更はありませんでしたが、下に述べるような全面的な改組計画が立てられ、平成8年度の実現を目指して取り組まれています。まだ、今後変更がなされるかも知れませんが、ここに概略をご紹介しておきます。

 研究所の研究活動をいっそう柔軟かっ効率的にまた学問分野を超えて推進できるよう、現在の16研究部門、2実験所、5観測所及び4研究センターを、[総合防災]、地震災害]、[地盤災箒]、[水災害]及び[大気災害]の5研究大部門と、[災害観測実験センター]、[地震予知研究センター]、[火山活動研究センター]、[水資源研究センター]及び[巨大災害研究センター]に改組再編します。このような体制により、大きな研究プロジェクトも推進しやすくなると考えられます。また、全国共同利用の研究所に転換して、大学の自然災害研究者に共同研究の場を提供し、一段と災害科学の発展を図るべきであると考えております。

 特に総合防災研究部門及び巨大災害研究センターは、これまでのような理工学系の研究者だけでなく、人文科学、社会科学、医学などの関連分野の研究者も加えて、災害を防止・軽減するために総合的な学際研究を推進する場として計画しております。[地域防災システム研究センター]、その前身であった[防災科学資料センター]、そして[都市施設耐震システム研究センター]でなされてきた人文・社会科学の分野との交流の長い経験と実績を踏まえて、今こそ、総合防災科学の確立に向かって第一歩を踏みだし、人類社会のために一層の貢献を目指そうとするものであります。

 読者のみなさまのご意見を、どうぞ本誌の編集担当者までお聞かせ下さいますようお願いいたします。
(文責 田中寅夫教授)