新任のご挨拶

所長 高橋 保 


 この度、はからずも防災研究所の所長を仰せつかりました。非才な私には過大な役割ですが、皆様方のご指導ご支援によりまして、何とか全うしたいものと思っています。よろしくお願い申しあげます。
 防災研究所は、昭利26年の創設以来、44年の歴史を数えていますが、前任の田中所長をはじめ多くの方々のご尽力により、全面的な改組計画が立案され、いよいよ平成8年度の実現に向けての正念場に至っています。
 防災研究所は、社会環境の変貌に呼応して複雑多様化した自然災害に対応する必要から、その都度、研究部門や研究センターを増設してきました。ここ数十年では、従来のいわゆる災害へのハード対応を主眼とした研究のみならず、社会システムをより災害に強い構造にする、いわゆるソフト対応のための研究部門やセンターを作ってきました。
しかしながら、大都市への急激な人口集中による社会の災害脆弱性の増大のテンポは著しく、過日の阪神・淡路大震災はそのことを如実に示しています。また、人間活動が地球的規模で環境を変化させつつある中で、猛台風の来襲や海面上昇、あるいは大旱魃も懸念されています。国際社会の中では、わが国の災害多発国への貢献が大きく期待されています。このような災害研究への要請の変化と緊急性に、従来よりもより柔軟に、かつ、より強固に対応するために今回の改組が計画されています。一つは、小部門、センター等の整理統合と多少の人員増によって、ハード的な対応研究と、阪神・淡路大震災で特にその重要性が認識された大災害への中・長期的及び緊急的ソフト対応とを有機的に結びつけながら研究が進められる仕組みとした5大部門、5センターへの移行です。もうーつば、防災研究所を全国共同利用の研究所として、国内はもちろん、国際的にも開かれた共同研究の場、及び情報の発信基地とし、従来、科学研究費を基礎に作られた自然災害総合研究班のネットワークを拡大発展して、英知を糾合して防災学の確立を目指す中枢として機能することをもくろんでいます。
 改組計画の一端をご紹介し、皆様のご理解とご支援をお願いして、新任の挨拶とさせていただきます。
(平成7年5月1日)