ワークショップに参加して

「インドネシアの火山噴火機構とテクトロニクスに関する共同研究」
ワークショップ(平成6年10月25日、於:バンドン市火山調査所)
写真右から、田中寅夫防災研究所長、R.Sukhyar火山解析部長、Suparto Siswowidjoyo教育情報部長

 10月も下旬になるとそろそろ雨季が近くなり、なんとなく雲ゆきも雨を予感させて、バンドンの街から北の方角にみえるはずのタンクバンペラウ火山のなだらかな姿もその日には見えなかった。 それでも青空がまぶしく照りつける太陽は南国のものであった。独特の雰囲気を漂わせる優美な西ジャワ地方政庁の建物に近く、デイホネゴロ通りをはさんだところにあるインドネシア火山調査所(VSI)で10月25日(火)に表記ワークショップを開催した。その日的は共同研究の成果の反省と今後の研究計画について討議するためである。新しく建築された調査所の2階の会議室を会場として、午前9時30分から12時分30まで全体では19人が出席したが、そのうち防災研究所からの出席者は西 潔、大谷文夫、井口正人および筆者の4名であ った。この共同研究は火山調査所を代表機関としてインドネシア国立科学院(LIPI)とバンドン工科大学(ITB)屯も参加しており、LIPIからは地質工学研究開発センター(RDCG)のEdy M.Arsadi氏、ITBからは測地工学教室教授のJoenil Kahar氏が出席された。

 ワークショップは最初に火山調査所(VSI)のSuparto博士から開会と歓迎の辞がのべられ、つづいて筆者が日本側を代表して挨拶を行ったあと、司会をつとめて共同研究の進行状況と今後の研究計画についての討議を行なった。

最初にSukyhar博士(VSI)がVSIと防災研の共同研究の概要を紹介し、計画ではとくに火山体の変形の観測が不十分であり、水準測量による研究が重要であると訴えた。続いて井口博士が桜島火山とメラピ火山の詳しい比較研究の結果と、地震・傾斜観測の今後の展望について述べた。筆者はITBと共同で行なっている西ジャワ地域での断層運動を中心とする地殻変動をモニターするためのGPS観測の結果と今後の計画について報告した。Edy氏はGPSによる断層運動研究、メラピ火山におけるMagneto-telluric調査について紹介し、とくにテクトニクス研究の重要性を強調した。

 これらの報告に関連しての質疑応答をはじめ多くの意見交換と討議がなされた。紙面の制約上すべてを紹介できないが、Gajamada大学における研究の状況を把握することをはじめ、インドネシアの関連機関相互の情報交換を改善していく必要があること、データの相互利用と互換性の推進、VSIとRDCGあるいはITBとの一層の協力体制の強化の必要性などが話し合われた。

 ワークショップのしめくくりとして、インドネシアの火山の最近の状況についてVSIのSuratman氏が多くのスライドを使って紹介されたが、筆者ら日本側の者にとってはたいへん興味深い講演であり、ますます共同研究の意義の大きさを認識するところとなった。

 最後に筆者がこれまでの実り多い成果と今後の発展の期待をこめてまとめの言葉をのべ、会を閉じ、別室に移って、VSIで準備されたおいしいインドネシア料理に舌づつみをうちつつ、午後1時半までの問、共同研究についての話題に花を咲かせた。

 ところで、ワークショップで使うOHP、文献映写用に立派なプロジェクターが準備されていたが、これが予定以上に電気を食うのか、会議室のコンセントからの電源ではブレーカーが断になってうまく動かず、結局階下から窓の外を通して延長コードをたらし、これによってやっと使用できたといった一幕もあった。立派な建物と新しい装置がうまくつながって使えないという、なにか、わが国ではあまり考えられない(もちろんたまには起こることもあるが!)ような右往左往をみて、こんなことも今後の共同研究を行なっていく上で、 考えにとめておくとよいな、などと感じた次第であった。
(防災研究所 田中寅夫)