京都大学防災研究所特定研究集会 15S-3

「対流圏長周期変動と異常気象」 報告

 人間活動に伴う地球温暖化に伴い、近年、対流圏循環も大きく変わりつつあることが認識され始めている。このことは、最近、世界各地で発生する異常気象の出現頻度や、その規模や分布が、20世紀におけるそれとは明らかに異なるという事実からも、うかがい知ることができる。そこで、最近の異常気象の実態を把握し、異常気象を引き起こす原因である対流圏長周期変動のメカニズムを解明することを目的に、標記の研究集会 (研究代表者: 京都大学防災研究所助 教授 向川 均) が、2003年10月30日・31日に、木質科学研究所木質ホールにおいて開催された。本研究集会には、全国の大学や、気象庁及び、研究機関の研究者 61名 が参加し、2日間で、26件の研究発表が行われた。

これらの発表では、日本の夏の天候を支配するオホーツク海高気圧の形成過程や変動要因、熱帯域と中高緯度大気との相互作用、および、北極振動に代表される成層圏・対流圏の力学結合など、中高緯度の異常気象と関連する対流圏長周期変動に関する様々な研究成果が報告された。特に、この研究集会により、近年の異常気象の実態や、その発現メカニズム、及び予測可能性に関する最新の知見を得ることができたのは大変意義深い。さらに、一日目夕刻に「2003年の夏の異常気象に関する討論会」と題するパネルディスカッションを実施し、日本域に冷夏をもたらしたオホーツク海高気圧とヨーロッパ域に猛暑をもたらしたブロッキング高気圧との関連や、インドモンスーンや西太平洋域の熱帯海面水温と日本の夏季の天候との関連などについて、大変熱心な討論が行われた。

各研究発表では、それぞれ20分間の講演時間を確保できたため、充分な議論が可能となり、研究者間の率直な意見交換も活発に行うことができ、大変盛況であった。また、大学院生などの若手研究者の研究発表も多く、若手研究者育成という観点からも、このような研究集会を毎年定期的に開催していくべきであるとの共通認識を得ることができた。
(大気災害研究部門 向川 均)