第40回自然災害科学総合シンポジウム

「防災研究の未来を考える」開催される

 京都大学防災研究所自然災害研究協議会(議長:佐々恭二教授)は、平成15年9月30日および10月1日の2日間にわたり、プリムローズ大阪において自然災害科学総合シンポジウムを開催した。
 1960年に発足した自然災害総合研究班によって開始された同シンポジウムは、当初、文部省(当時)科学研究費補助金の自然災害特別研究の総括班(総合研究班の幹事組織)によって運営され、計画研究、突発災害調査研究の報告、一般募集課題の発表等の場として20年程度機能してきた。1981年日本自然災害学会設立以後、近年は、突発災害調査研究報告の場として、同学会と同じ時期・同じ場所で半日程度の規模で開催されてきたが、今年は、40回を記念してこれまでとは異なる企画をふんだんに盛り込んで行われた。

 初日は、「40回記念シンポジウム」と銘打って、冒頭においては、上述のような総合研究班の果たしてきた役割ならびに自然災害総合研究班が2001年より京都大学防災研究所のなかに自然災害研究協議会という形で位置づけられ生まれ変わった経緯や今後の展望について河田恵昭教授より基調講演が行われた。その後、今年発生した宮城県における連続地震、九州の豪雨氾濫土砂災害の速報がなされるとともに、関連学会や文部科学省の動向、防災実務に直結した新しい取り組みの紹介があり、聴衆の興味を引いた。最後には、総合討論の時間を設け、今後の防災研究のあり方について熱心な討議がなされた。  2日目は、「自然災害研究協議会の果たす役割」というテーマのもとに、冒頭には、佐々議長から、突発災害調査研究の推進、防災研究予算拡充の必要性、国際的展開への指向など、協議会の基本的方向性が述べられた。また、協議会の6地区部会からの報告、人材データベースの稼働(佐藤忠信企画委員)、科研費等の申請(中川一総務担当委員)などの委員会活動、データベースSAIGAI(林春男委員)、国際的組織の動向等が報告され今後の展開に向け討論が行われた。午後には、例年のように、科研費の特別研究促進費でなされた韓国の台風災害調査研究の報告(研究代評者:寳馨教授)をはじめとして国内外の災害について6件の報告がなされるとともに、突発災害調査研究の現状とあり方を議論して幕を閉じた。
 参加者は、大学、官公庁、民間会社、学生などで、述べ約160名(初日は105名)であった。シンポジウム会場では、協議会のパンフレットをはじめ、各学会の資料等が配付された。会議の議事録、発表要旨、論文などを取りまとめた冊子を後日発刊し参加者に送付する予定である。シンポジウム関係の最新情報を下記のウェブサイトで公開していく予定である。プログラムを下に示す。
http://fmd.dpri.kyoto-u.ac.jp/~flood/shizensaigai/index.html
                        (自然災害研究協議会)

第40回自然災害科学総合シンポジウム「防災研究の未来を考える」
開催日:平成15年(2003年)9月30日(火)〜10月1日(水)
場所:プリムローズ大阪
主催:京都大学防災研究所自然災害研究協議会

9月30日 第1部 第40回記念シンポジウム(司会:寶 馨・牛山素行)

●開会 自然災害研究協議会議長 佐々恭二
基調講演 
京都大学防災研究所教授 河田恵昭
 「自然災害総合研究班〜自然災害研究協議会の40年の歩みと今後」
2003年の連続災害に研究者はどう取り組んだか?
(1)5月26日および7月26日宮城県における連続地震災害

地震の概要 東北大学大学院理学研究科助教授 海野徳仁
建物等の被害に見られる特徴 東北大学大学院工学研究科講師 佐藤 健
地盤災害に見られる特徴 東北大学大学院工学研究科講師 渦岡良介

(2)7月19〜20日九州各地における豪雨災害
福岡・太宰府における豪雨災害(都市水害と土砂災害) 九州大学大学院工学研究院助教授 橋本晴行
水俣市など南九州における土砂災害 宮崎大学農学部教授 谷口義信
水俣市の災害に見る地域防災の課題 長崎大学工学部教授 高橋和雄

防災研究に関わる諸学会の動向と課題を考える
日本自然災害学会 諏訪 浩「日本自然災害学会について」
地域安全学会 宮野道雄「地域安全学会について」
日本災害情報学会 中村信郎「日本災害情報学会の活動(創立五周年を迎えて)」
日本リスク研究学会 佐藤照子「日本リスク研究学会について」
文部科学省研究開発局 地震・防災研究課 防災科学技術推進室 田中宏明
 「防災研究フォーラムについて」

防災研究に関わる新しい取り組み
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター 副センター長 深澤良信
 「人と防災未来センターにおける実戦的な防災研究」
アジア防災センター所長 西川 智
 「アジアの持続可能な開発のための総合的な防災政策(TDRM)の展開」
気象庁観測部防災情報提供管理室 橋田俊彦 
 「防災情報提供センター」
(社)国際建設技術協会 国際洪水ネットワーク(IFNet)事務局長 菊池良介
 「国際洪水ネットワーク」

総合討論「これからの防災研究はいかにあるべきか」
国の防災機関の立場から  国土交通省近畿地方整備局企画部長 足立敏之
現場行政機関の立場から  大阪府土木部事業管理室参事 田中義宏「大阪府の防災」
市民防災の立場から  富士常葉大学環境防災学部講師 小村隆史
一研究者の立場から  群馬大学工学部助教授 片田敏孝

10月1日 第2部 自然災害研究協議会の果たす役割

自然災害研究協議会の展望 (司会:中川 一)
自然災害研究協議会の今後の展望 佐々恭二
地区部会から
北海道地区 「2003年8月の北海道日高地方の水害報告」
北海道大学大学院助教授 清水康行

東北地区  「東北地区部会の活動について」
東北大学大学院教授(東北地区部会幹事) 源栄正人

関東地区  「埼玉県との防災・環境フォーラムについて」
埼玉大学地圏科学研究センター教授 渡辺邦夫

中部地区  「中部地区部会の課題」
名古屋大学大学院教授(中部地区部会長) 辻本哲郎

関西地区  「関西地区で発生した自然災害とこれからの対応」
高知工業高等専門学校助教授 小野正順

西部地区  「九州地区部会の活動について」
九州大学大学院助教授 橋本晴行

委員会活動   
  データベースと研究活動経費について 企画担当委員  佐藤忠信
  科研費の申請について        総務担当委員  中川 一
  データベースSAIGAIの今後                林 春男
  自然災害研究の国際的展開    ANCER(佐藤忠信)ICL(佐々恭二), IGOS, APHW, AOGS(寶 馨)
  今後の展開に向けた討論

突発災害調査に関する報告と議論  (司会:佐々恭二)
2002年台風RUSAによる韓国の豪雨洪水土砂災害  京都大学防災研究所教授  寶  馨
2002年欧州エルベ川・ドナウ川の水害  京都大学大学院工学研究科助教授 中北英一
                         京都大学防災研究所助教授  戸田圭一
海外の地震災害               山口大学工学部助教授   村上ひとみ
海外の火山災害               京都大学防災研究所教授  James MORI
海外の斜面災害について          京都大学防災研究所助教授  福岡 浩
2002年10月6?7日突風災害         防衛大学助教授  小林文明
突発災害調査の現状とあり方(ディスカッション)         寶  馨

水災害研究部門 寶  馨