桜島火山観測所

 桜島火山観測所は、火山の爆発機構と噴火予知の研究を行うために、昭和35年12月に防災研究所の附属施設として発足した。当初の本館は山頂火口から約3km離れた、霧島、桜島及び開聞岳が望める溶岩ドームの頂上にあったが、火山灰と火山ガスによる機器の障害を避けて、昭和52年度に海岸線近くに本館を新宮した。平成5年度には、本館敷地内に岩石磁気測定のための磁気遮蔽室を設置した。現在は、桜島を中心に霧島火山帯にそって南北約400kmの範囲の約50地点に、地震、空振、傾斜・歪、GPS、潮位、地下水・温泉水、火山ガスなどの常時観測点を設け、水準測量など各種の繰り返し測定を実施している。旧本館とその敷地は、観測坑道での地盤変動観測を含め多項目観測の拠点及び野外観測実験の足場としての役割を果たしている。観測所所属の教職員は常勤7名、非常勤3名であり、大学院生(留学生)は1名である。

 本観測所は、活火山の噴火機構及びマグマ供給システムの総合的理解をめざして、全国の火山観測所及び学内外の地質学、地球化学などの分野の研究者との共同研究を継続してきた。その結果、桜島のマグマ供給系に関する理解が深まり、観測 網の整備によって、顕著な噴火の発生予測に役立つ程度に、地下のマグマの挙動が把握できる段階に至った。現在は、これまでの研究成果を実証し、発展させることを目的に、噴煙による航空機の被災軽減に関する研究を目木航空と、ジャワ島の活火山の噴火機構に関する研究をインドネシア火山調査所と行っている。また、桜島南岳は常時噴煙 をあげているので、国内外の研究者による火山灰や噴煙柱の運動に関する実験的研究の足場としても本観測所は利用されている。
 桜島は40年にわたり爆発的噴火を繰り返していて、降灰は降雨と同様に日常的な現象である。桜島の動静は、地元にとって最大の関心事のひとつである。地震観測だけでは噴火予測に無煙があるので、本観測所は直前予測に有効な地盤変動データを火山監視業務にあたっている鹿児島地方気象台に常時提供し、防災対策上必要な火山噴出物などの調査資料や観測資料を地方行政機関に提供して、随時、活動の評価と予測に関する見解を示してきた。しかし、噴火の前兆は種く微小であり、的確な判断を下すには、観測システムを常に最良の状態に保ちつつ「山」を観察して、精密な測定と調査を繰り返す必要がある。その任にあたる技術職員の役割と負担が大きい。