水資源研究センター


 水資源研究センターは昭和46年5月1日付で日本学術会議が第58回総会の議に基づいて設立を勧告した水資源科学研究所(仮称)の性格を受け継ぐものであって、昭和53年4月1日に京都大学防災研究所の附属施設として発足した。
 現在は、水資源に関わる自然現象の解明と予測ならびにそれらをベースにした水資源の開発・有効利用のための計画・管理論の構築を目的として、地球規模にいたる諸スケールでの水循環システムの解明とその防災問題への応用手法の研究を行う陸水収支研究分野と水資源の合理的な供給と利用のトータルシステムを研究する水資源システム研究分野の2つの専任研究分野(専任教官5名)、当面する重要プロジェクトを担当する客員研究分野(客員教官2名)及び技官1名によって構成されている。さらに、共同研究の実をあげるため、学内・外の委員で構成される運営協議会により運常にあたるとともに、専任・客員が共同していくつかのプロジェクト研究をかかげ、これらの委員を通じて募られた共同研究協力者(90名程度)を主たるメンバーとして数々の研究例会・ワークショップを開催し、秋にはそれらの成果を水資源セミナーでより多くの方々に披露している。これらの概要は水資源研究センター研究報告(昭和55年度より毎年発行)にも登載されている。
 より具体的には専任研究分野では、降水の時空間分布特性の確率論的・物理的研究と、レーダーや衛星を利用した降雨予測・計画降雨算定手法の開発。種々の蒸発散過程を含めた複合場からの水・熱循環過程のスケールアップと大気大循環モデルへの結合。オペレーターや降雨予測の知識の獲得システムと定性推論を結合したダムの管理・操作方法の開発。水資源計画・管理のためのシステム論的研究、特に水利用・水配分に伴うコンフリクト亀リスクの分析・評価の方法論に関する研究。水利用者のライフスタイルや水利用行動を明示的に考慮した水システムのマネジメントに関する研究及び防災意識の定量化と社会心理学的解明。循環型地域水利用システムの計画・管理に関する研究。を行っており、客員研究分野では生態学的観点からみた河川の環境評価慶び水循環のリスクマネジメントに関するプロジェクト研究を、共同研究では琵琶湖水資源・水環境の研究や、加えて降水・流出系モデルのスケールアップの方法論や水・環境技術の影響評価に関するプロジェクト研究を行っている。さらに,最近では昨年の全国的大渇水、本年1月の阪神・淡路大震災に対して水資源の立場からハード・ソフトの両面から被害の防止・軽減策を考究している。
 また、当センターは上記のように仝国共同利用的な運営・研究体制を取っており、 その一例として、当センターがプロジェクトリーダー的役割を担っている琵琶湖流域における水文循環の素過程の衛星同期共同観測、いわゆる「琵琶湖プロジェクト」が存在する。琵琶湖プロジェクトは、琵琶湖流域における大気、地表、地中、地下(鉛直方向)あるいは湖面、森林、田畑、都市(水平方向)という全体を包含した水循環系を、水の各相への変換及びその各相としての循環、そして水と共に循環する熱及び運動量の循環、あるいは今まで水文学であまり意識されてこなかったエネルギー循環系として、地上観測、衛星観測、モデルを組み合わせて総合的に解明することを目的とする。最大100名程度の参加による衛星同期共同観測を平成4年以来5回行うに至っている。特に本年は、世界で初めてとなる飛行船を用いた大気観測と地上・航空・衛星観測を同期することに成功し、3次元的な水・エネルギー循環系の解明のための貴重なデータを取得することができた。また、プロジェクトに参加する研究者間での自由なデータの取得のために、平成6年度には琵琶湖プロジェクトデータカタログを発行、平成7年度にはFTPサーバーを導入するなどして、データを共有した上での議論を活発にするネットワーク環境を整えてきた。
 このように、当センターにおける研究活動は、内容も広がり、かつ充実してきているため海外においても注目され、最近では国外からの訪問・討議の研究者も多数にのぼるようになった。