昆明を訪ねて雑感

 まだ京都では暑さが残る9月の上旬、上海からでも2,OOOkm近く離れた中国雲商省の昆明に入った。北回帰線のすぐ北にあるが、高度のせいか暑くはなかった。
 そこにある国家地震局雲南省地震局との国際共同研究の状況把握と、今後の研究進展についての打合せのため、高橋防災研究所長に伴って訪れたもので、今回の中国旅行の最初の目的地であった。 飛行場には日本に留学経験のある蒋楽群副教授が日本製の中型四輪駆動の新車で迎えて下さった。
 明るく空気の澄んだ町中を走り、若者が多くたたずんでいる通りに雲南省地震局があった。門の周辺には五、六階建てのアパート群が建並び、地震局の広い中庭には処どころに自動車が停り門前と同じ様な若者が取り巻いていた。

 姜地震局長、晏副局長以下共同研究関係の研究者との打合せの中で、詳細に説明を受けたのは、7月11日21時46分に発生した M7.2の中国・ミヤンマー国境の地震が予知できたこと、そのため広域の構造物被害の割には死者が6名と非常に少なかったこと等であった。この予知ができたことで雲南省地震局が、国家的表彰を受け栄誉に輝いたことは喜ばしいことであった。あとで、前述の出迎えの新車は、この地震で損害を受け新しくなったものとの立話だった。
 その立話のつづきに、門前や中庭に多く集まる若者について話を聞き、国の事情による制度の違いに考えさせられた。それは、地震局が自動車免許取得のための教習事業を行い、授業料を取って収入を得ているという話である。地震観測研究の閑暇に、多数おられる研究支援職員が、研究予算や人件費の一部にするため稼いでいるとのことから、すぐに頭に浮かんだことは、職務の専念義務とか、予算の仕組とか、自動車の所属はどうなっているのかと言うことだ。制度を問いただしたわけではないが、日本の国の諸規則の考えとは大分異なるようである。
 このようなことが行われていることに世界の広さを感じながら思い出すことは、国際共同研究から帰ってこられた研究者達が、観測機材の通関や、現地施設の使用等についての苦労を訴えておられることだ。他国 の事情も分からず、国内の考えで判断して処理しようとする我々には、もっと見聞を広め学ぶことが多いと思われる。
 この旅行はこの後、日本ではちょっと見る事の出来ない昆明近郊の異景の地「石林」、南画そのままの風光明媚な「桂林」の河も拝見しつつ、西安、北京の地震局の方々と会合したり、観測地などを訪問し、さまぎまな体験をさせて頂いた。
(防災研究所事務部長 岡本克郎)