ユネスコ/京都大学/国際斜面災害研究機構(ICL)による
UNITWIN共同計画設立に関する協定の調印


1.背 景
 地すべりは,都市域あるいは都市化域において住宅地域を破壊し,壊滅的な災害をもたらす。道路,鉄道,橋梁,ダム,港湾などの土木・建築構造物を破壊し,甚大な経済損失を与えるばかりか,時として文化遺産・自然遺産や,その他の人類にとっての脆弱な資産も壊滅する。21世紀に入ったばかりの現在,斜面災害危機度軽減と,文化・自然遺産の保護は極めて重要であるが,国際レベルでの斜面災害に関する共通のプラットフォームが存在しなかったため,京都で開催されたユネスコ京都大学共催シンポジウム「斜面災害危険度軽減と文化自然遺産の保護」国際斜面災害研究機構(ICL)が設立された (DPRI Newsletter No. 23, 2002)。これと同時に,斜面災害研究推進の核としての斜面災害研究センターの設立とこのセンターを中心として国際的ネットワークを推進するためにユネスコChairs /UNITWIN プログラムに申請することが提案された。
2002年11月にユネスコ本部においてICLの第1回代表者会議(1stBOR/ICL)が開催された。現在までに世界15カ国,33研究機関が会員として登録し,特別後援機関には国連教育科学文化機関,世界気象機関(WMO),国連世界食糧農業機関(FAO),国連国際防災戦略(ISDR)事務局, 日本国文部科学省,米国内務省地質調査所他が入り,平成15年2月にはICLが国際地質学連合(IUGS)の加盟機関(Affiliated Organization)に加わったことからNGOからの後援機関としてIUGSが加わった。ICL事務局連絡先,およびICL会員機関リストは末尾に添付する。そしてユネスコ,国際斜面災害研究機構,京都大学,ユネスコ国内委員会間における種々の検討の後,京都大学からユネスコ/京都大学/国際斜面災害研究機構合同のUNITWIN計画を申請することになった。
写真1(上) 京都大学総長室で行われた調印後の記念写真  前列左から,D.Beridze(ユネスコ高等教育部),長尾眞(京都大学総長),A. S.Nagy(ユネスコ副事務総長代理),佐々恭二(本研究所教授・国際斜面災害研究機構(ICL)会長).後列左から,R.Mucho(ICL副会長,ペルー),P.Bobrowsky(ICL副会長,カナダ),入倉孝次郎(本研究所長),P.Canuti(ICL副会長,イタリア),石田徹(文部科学省国際課企画調整室長),盛田謙二・(文部科学省研究開発局防災科学技術推進室長)写真2(下)長尾総長と佐々会長の調印の様子

2.ユネスコ・ICLとのUNITWINプログラム
ユネスコ教育局高等教育部が推進するUNITWINプログラムは,世界中の異なる地域の大学及び高等教育機関の教授,研究者,管理者が共同活動することで,相互間の密接な協力とネットワーク,その他関連する調整事項を通して,迅速な知識移転を促進することにより能力開発,人材育成への促進に資してきた。ユネスコ/京都大学/ICL間で合意された協定文に,平成15年3月10日,パリのユネスコ本部においてユネスコ事務局長(松浦晃一郎)がサインを行い,サインされた協定書3部を携えてユネスコ高等教育部のUNITWIN Programme主幹のDimitri Beridze氏が来日し,3月18日に京都大学総長室において,ユネスコ副事務局長代理・Andras Szollosi-Nagy,ICL副会長3名Paolo Canuti (フローレンス大学教授,国際応用地質学会副会長),Peter Bobrowsky(カナダ地質調査所・地すべり被害軽減計画委員長,国際地質学連合副会長),Romulo Mucho (ペルー地質鉱物金属研究所長) , 文部科学省大臣官房国際課企画調整室長・石田徹,文部科学省研究開発局防災科学技術推進室長・盛田謙二,防災研究所長・入倉孝次郎,京都大学研究協力部国際交流課長・戸倉照雄他の立ち会いの下で長尾眞・京都大学総長と佐々恭二・ICL会長が,協定書三部に署名し,ユネスコ/京都大学/国際斜面災害研究機構(ICL)による「環境に資するため新たな斜面災害危険度軽減共同計画」が発効した。 次に協定書の抄訳を示す。

3.UNITWINを構成するICL参加機関
ICL参加機関と当該機関からのICL代表者及び代表者代理は以下の通りである。

1.カナダ地質調査所 Peter BOBROWSKY・Steve EVANS
2イタリア・エネルギー新技術環境庁(ENEA) Guiseppe DELMONACO・Claudio PUGLISI
3イタリア全国地質会議 Pietro Antonio De PAOLA・Gerardo NOLLEDI
4.イタリア・フィレンツェ大学地球科学部 Paolo CANUTI・Nicola CASAGLI
5イタリア文化遺産コンソーシアム(CIVITA) Claudio MARGOTTINI
6.京都大学防災研究所斜面災害研究センター 佐々恭二・福岡 浩
7.京都大学防災研究所洪水災害分野 寶 馨・Roy SIDLE
8.金沢大学工学部地盤工学研究グループ 松本樹典・汪 発武
9.東京大学土木工学・地盤工学研究グループ 東畑郁生
10.東京大学生産技術研究所 小長井一男
11.新潟大学積雪地域災害研究センター 丸井英明・渡部直喜
12.(独法)森林総合研究所 廣居忠量・落合博貴
13.国土交通省国土地理院 市川清次
14.(社)日本地すべり学会 山岸浩光・福岡 浩
15.ノルウェー・国際地盤災害センター Oddvar KJEKSTAD・Farrokh NADIM
16. 米国地質調査所 John PALLISTER・Randall G. UPDIKE
17. チェコ・チャールス大学・地球ダイナミクス研究センター Vit VILIMEK・Jiri ZVELEBIL
18. スロバキア・コメニウス大学自然科学部応用地質学科 Rudolf HOLZER・Jan VLCKO
19. 中国・西安市華清池地すべり観測所 楊清金
20. 中国・長春吉林大学・環境地質災害研究所  曹炳蘭
21. 中国・東北林業大学 Wei SHAN・Yin-ge ZHANG
22. 中国・重慶地震局 Ding RENJIE
23. エジプト・カイロ大学工学部岩盤工学研究所 Yasser ELSHAYEB・Hany HELAL
24. イラン・建築住宅研究センター S. H. TABATABAEI・M. H. Tofigh RAYHANI
25. イラン土砂保全流域管理研究センター   Z. SHOAEI
26. ジャマイカ・西インド大学 Rafi AHMAD
27. ネパール・国際山地統合開発センター (ICIMOD) 李天池
28. ペルー・地質鉱物金属研究所 Romulo MUCHO・Antonio GUZMAN
29. ペルー・Grudec Ayar社 Raul CARRENO
30. ロシア・株式会社水計画研究所 Alexander PIOTROVSKIY・Alexander STROM
31. ロシア・連邦国家地質事業団「地域監視センター」 Oleg ZERKAL・Julia V. FROLAVA
32. ロシア学術会議・環境地球科学研究所(IEGRAS) Victor OSIPOV・Svalova VALENTINA
33. タイ国農業協同省・土地開発局 Chaiyasit ANEKSAMPHANT・Manu SRIKHAJON

斜面災害研究センター 佐々恭二